日本国内で、バター不足が続いています。酪農家の離農で、バター原料になる生乳の生産量が低下しているのに加え、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉をにらみ、国内の酪農家保護のため、バターの輸入拡大が難しくなっているのが原因です。日常生活に直結するバターの不足は、日本農業のあり方を浮き彫りにしています。

 8月24日の日経新聞の記事「エコノフォーカス」は、昨秋から満足な入荷が出来なくなっている東京・練馬のスーパーを紹介した後、東京都区部の7月の小売価格(箱入り、200グラム)が436円で1年前より21円高くなっていることを指摘しています。

 そのうえで、バター不足の理由として、国内の酪農家が2015年、1万7700戸で、この10年間で1万戸減り、生乳生産も前年度より1.6%少なく、2年連続で減少していることをまず挙げています。

 また、バターがコメや麦などとともに、政府が輸入量や価格水準を管理する「国家貿易」の適用下にあることを指摘、年内に、バター1万トンを輸入するものの、TPP交渉をにらみ、国内の酪農農家を保護するため、バターをこれ以上輸入するのが難しくなっていることを強調しています。

 日経新聞の記事をもとに、もう少し、調べてみると、生乳の生産は2014年、733万トンで、1990年の820万トンに比べると、大きく低下しています。また、バターの国内生産も2014年、6.1万トンで、8万トンの国内消費には達していません。

 足りなければ、輸入すればいい、と考えるのが普通ですが、そう簡単にはいかない事情もあります。ニュージーランドやオーストラリアなどのバターは、日本産に比べて、3分の1の価格で、国際競争力が高くなっています。このまま輸入すると、日本国内の酪農家は太刀打ちできず、生産が成り立たなくなります。

 日本政府がバターの輸入に360%の関税をかけているのはこのためです。チーズに対する30-40%の関税に比べると、その高さがわかります。バターは脱脂粉乳、水を加えると、牛乳になるため、酪農家保護のため、制限しているのだそうです。

 TPP交渉で、ニュージーランドなどは、日本に対して、一層のバター輸入を求めています。TPPは自由貿易を原則に、すべての加盟国が富むシステムを構築しようとするものですが、日本の酪農家保護を見るだけでも、そう簡単でないことがわかります。日本の消費者にとっては、安価なバターのほうがいいことは当然です。

 外国とどうつきあうか。日本国内の酪農家をどう保護するのか。さらに、消費者の声はどう反映させていくのか。バター不足問題は、TPPのあり方だけでなく、日本農業の将来を問うものとなっています。