2016年の世界情勢をわかりやすく、やさしく解説  新刊「一気にわかる!池上彰の世界情勢2016」

 難解なニュースも、やさしく、わかりやすく解説することで定評のあるジャーナリスト池上彰さんの新刊「一気にわかる!池上彰の世界情勢2016」(毎日新聞出版)を興味深く読みました。イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)や、地位の揺らぐ米国、高度成長に急ブレーキがかかった中国、世界に広がる格差と紛争など2016年に大きく動くことが予想される世界情勢を把握することができます。

 2016年の世界情勢がどうなるのか。「教科書」として、繰り返し、読み込みたいと思います。

 「2015年は、自称『イスラム国』に始まり、『イスラム国』に終わったような気がします。新年早々には、日本人ジャーナリストの後藤健二さんら2人の日本人が殺害されました。欧米諸国は、『イスラム国』に対する空爆を強化しましたが、11月にはフランスで同時多発テロを引き起こし、一般市民が多数犠牲になりました」

 イスラム国が昨年、世界に大きなインパクトを与えたという認識はまさに、その通りでしょう。池上さんがこう書き出した本の「まえがき」を読むだけでも、昨年、世界で何が起き、2016年に向けて、世界がどう動くかがよくわかります。

 本文は、「『グローバル・テロ』の時代が到来」「高度成長にブレーキのかかった中国」「地位揺らぐアメリカ、孤立するロシア」「一つになれないヨーロッパ」「世界に広がる『格差』と『紛争』」「『新たな冷戦』の時代に日本の課題は?」の5章にわたって、世界情勢が解説されています。イスラム国はどう動くのか、シリア内戦はどうなるのか、チャイナ・リスクの現実は?、米国とキューバの国交回復の背景は?、新大統領が誕生する米国はどうなるのか、反EU(欧州連合)勢力はさらに伸張するのか、過去最高の欧州への難民がもたらすものは何か、などが取り上げられています。

 本は、「毎日小学生新聞」の連載「教えて!池上さん」の記事を元に加筆・編集して作成したものですから、わかりやすく解説されています。

 新聞を日々、読む中で、疑問が生じたら、この本に戻って、問題の背景を改めて読むのもいいでしょう。この本を入門書にして、専門書を読んでいくのもいいでしょう。本は大いに活用できそうです。

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一気にわかる! 池上彰の世界情勢 2016

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 なぜ、池上さんが、難解な事象を、やさしく解説できるのか―。その理由は、池上さんの情報収集法にあると私は考えています。「池上彰のニュースの学校」(朝日新聞出版)によると、池上さんは、独自のスクラップで情報を収集・分析しています。池上さんは、朝日、毎日、読売、日経、サンケイエクスプレスなど8紙を毎日読んでいるそうですが、まずは、朝、さっと全紙に目を通すといいます。時間にすると、15分か20分。夜になったら、読み直し、気になった記事をビリビリ破いて、そのまま、取っておくそうです。ニュースを寝かせるかめです。時間の経過の中で、どれだけの価値があるか判断するためです。

 数週間たったら、改めて、それらの記事を読み、役に立つ記事だけをA4用紙に貼り、テーマごとに、クリアファイルに入れていくといいます。最初は「政治」「経済」「国際情勢」など大きく分けるそうですが、記事がたまってきたら、「政治」なら、「自民党」「民主党」「その他の野党」などに、さらに、「憲法改正の記事」「消費増税の記事」などさらに小さく分けていくといいます。

 「同時進行の複数のニュース、それから過去のニュースと結び付けることで、そこでは何が起きているのか、これから何が起こるのかを予想する。これがまさに、『ニュースを読み解く』ということです」

 池上さんは、「ニュースの学校」で、こう書いています。その通りでしょう。

 私もほぼ同じような形でスクラップをしていますが、「池上流」をもっと取り入れようと思っています。まずは、できるだけ、多くの新聞を読むことです。池上さんは、「ニューヨーク・タイムズ」や「ウォール・ストリート・ジャーナル」など海外の新聞をはじめ、「週刊ダイヤモンド」や「週刊東洋経済」など経済誌の特集、「タイム」や「エコノミスト」の海外の雑誌などにも目を通していますが、私も、海外の新聞や雑誌も読み込もうと思っています。海外が日本をどう見ているのか、という視点を探ることはとても大切なことです。

 池上さんは、進路の決まっていない学生や、定年退職後、第二の人生をどうするか決まっていない人々に、新聞のスクラップをすることをすすめています。新聞の記事をきちんとスクラップしたら、きっと、自分の興味のあることが浮き上がってくるでしょう。私も、スクラップに一層、力を入れて、これからのテーマを綿密に探し出したいと思います。

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 2017年版の「一気にわかる!池上彰の世界情勢2017」(毎日新聞出版)についても記事を書いています。

「『想定外を想定する』ことが必要なのです」――。ジャーナリストで名城大学教授の池上彰さんの著書「一気にわかる! 池上彰の世界情勢2017」を読むと、こんな一文が目に飛び込んできます。想定外のことが起きたのが2016年の世界潮流であり、2017年も、想定外のことが起き得るとして、池上さんは、ニュースの背景や歴史を学ぶように勧めています。

 「2016年は、まさか、という言葉がしきりに聞かれました。イギリスがEUから離脱するかどうかを問う国民投票では、大方の予想を裏切って離脱が決まりました。アメリカ大統領選も、多くの予想とは異なり、ドナルド・トランプ氏が当選しました。世界情勢を予測することの難しさを痛感した一年でした」・・・続きは、こちらをお読みください。