クリントン米大統領候補の私的メール問題とは 選挙戦終盤で、再燃化 選挙結果への影響は?

 11月8日の米大統領選投票を前に、有力候補であるヒラリー・クリントン候補(69、民主党)の私的メール問題が再燃化しています。米連邦捜査局(FBI)は7月、この問題の捜査を打ち切ったものの、10月28日、新たなメールが見つかったとして、再捜査する方針を出したためです。クリントン候補は3回の公開討論で優位に立ち、その後、女性蔑視発言で批判された共和党のドナルド・トランプ候補(70)をリードしてきましたが、このメール問題の再燃化で、トランプ候補がリードを急速に縮めています。選挙戦は終盤で再び、大接戦となっています。

 メール問題とは

 クリントン候補が国務長官在任中(2009年1月から2013年2月まで)、国務省のメールではなく、個人メールを公務でも使用していたものです。国家の機密情報がこの私的メールを通じて、外に漏れた恐れがあるのではないかと批判を浴びています。2015年3月、米紙の報道で明らかになりました。
 今回、新たに見つかったメールは、クリントン候補の長年の側近であるフーマ・アベディン氏のパソコンの中に保存されていました。FBIはアベディン氏の夫、アンソニー・ウィーナー元下院議員が15歳の少女に卑わいなメールや写真を送ったとする疑惑を捜査しており、この捜査過程で、新メールを見つけました。FBIは、このメールに機密情報があるかどうかを捜査する方針ですが、内容については明らかにしていません。問題が再燃化したことで、クリントン候補の大統領としての資質を問う声が再び、強まっています。
 これに対して、クリントン候補は、新メールの内容を即時に公表するようFBIのジェームズ・コミー長官に要求。民主党幹部や司法省は、選挙直前の再捜査は不適切として、FBIを批判しています。
 この問題では、現職のジョン・ケリー国務長官を除き、コリン・パウエル元国務長官(2001年ー2005年)ら歴代の国務長官も公務に個人メールを使用していたとされています。「国務省の構造的な問題」として、今後も、米政権を揺さぶることになりそうです。

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 メール問題の経緯

 クリントン候補のメール問題は2015年3月の発覚以来、以下のような経緯をたどってきました。
 2015年3月  米紙ニューヨーク・タイムズが、クリントン候補の私的メール問題を報道。
          クリントン候補は当初、個人メール使用について、「便利だったから」と説明
          しながらも、メールの一部を消去。
 2015年9月  クリントン候補が「公務での個人メール使用は誤りだった」として、有権者に
          謝罪。
 2016年7月  FBIが、「不注意の度合いが大きいものの、法律違反の証拠はない」と
          して、クリントン候補の訴追を見送る。
 2016年10月 FBIがクリントン候補の新たな個人メールを発見。
          トランプ候補が「大統領として不適格」として、クリントン候補を批判。

 メール問題の衝撃度

 メール問題は終盤に来て、クリントン候補の優位を一気に変えてしまいました。メール問題の再燃化は衝撃度の大きさを物語っています。クリントン候補は、3回の公開討論会で「勝利」したのに加え、トランプ候補の相次ぐ女性蔑視発言で、一時、世論調査で10ポイント以上、トランプ候補を引き離しましたが、米政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」の最新調査では、クリントン候補47.0%、トランプ候補45.3%、と再び、僅差になりました。世論調査によっては、トランプ候補がクリントン候補を上回るものも出ています。

 今後の展開

 メール問題が再燃化しても、クリントン候補がやや優位との見方がありますが、私的メール問題の衝撃度を考えると、今後の展開は不透明になっています。クリントン、トランプ両候補とも、大接戦州での勝利に向けて、最後の選挙戦を繰り広げています。大接戦州をどう押さえるかが大統領選の動向を大きく左右しそうです。

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