ロフテッド軌道の意味とは? 高度や速度は? 迎撃は難しい?

 北朝鮮が2022年1月30日、弾道ミサイル1発を同国内部から日本海に向けて発射しました。ロフテッド軌道で発射され、中距離以上の弾道ミサイルと見られています。

 ロフテッド軌道の意味とは何で、具体的に、どんな発射技術なのでしょうか。また、高度や速度はどうなっているのでしょうか。迎撃は難しいのか、北朝鮮の狙いは何かも含めて、ロフテッド軌道についてまとめました(トップの写真は、2022年1月30日の弾道ミサイル発射を報じる朝日、読売、日経の新聞記事)。

ロフテッド軌道の意味とは

 ロフテッド軌道とは、通常よりも高い角度(45度以上)で、弾道ミサイルを打ち上げる技術で、弾道ミサイルの飛行する軌道を指します。最大高角発射システムとも言われています。

 通常の角度で発射した場合は、できるだけ遠くの目標地点に到達することを狙っていますが、ロフテッド軌道による弾道ミサイルは高い角度に打ち上げるため、飛距離は通常の角度で発射した場合に比べると、落ちます。

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ロフテッド軌道の高度や速度は?

 今回の北朝鮮によるミサイル発射は、最高高度約2000キロメートルで、約800キロメートル飛んだと推定されています。速度は最高でマッハ16(音速の16倍)に及んだと見られています。

 新聞各紙の報道によると、北朝鮮は2016年6月22日以来、これまでに以下のように、ロフテッド軌道で弾道ミサイルを発射したと見られています。

 2016年6月22日 中距離  ムスダン  高度1400キロ
 2017年2月12日 中距離  北極星2型 高度 550キロ(500キロとの報道も)
      5月14日 中長距離 火星12  高度2111.5キロ 
      5月21日 中長距離 北極星2型 高度 560キロ 
      7月 4日 大陸間  火星14  高度2500キロ 
      7月28日 大陸間  火星14  高度3725キロ
     11月29日 大陸間  火星15  高度4475キロ  
 
 飛行距離はいずれも1000キロに達していませんが、通常軌道で発射した場合、飛行距離は、実際の飛行距離の数倍に及ぶと見られています。今回の弾道ミサイルも通常軌道で発射した場合は、飛行距離は約5000キロにとされ、日本だけでなく、米国のグアムにも到達するものと分析されています。

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ロフテッド軌道による弾道ミサイルの迎撃は難しい?

 ロフテッド軌道では、弾道ミサイルを高度に発射する分、落下速度が増し、通常軌道に比べて、日本で配備されている地対空誘導弾「PAC3」などでの迎撃が難しくなります。

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北朝鮮の弾道ミサイル開発の狙いは

 北朝鮮の最終目標は、核弾頭を搭載して米本土に到達できる大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発です。たとえば、2017年7月4日の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の場合、実際の事項距離は933キロですが、通常軌道で発射した場合は、8000キロ~10000キロに及ぶと推定されています。米首都ワシントンなど東海岸には届かないものの、ハワイやアラスカ、さらには米西海岸に到達する射程となり、最終目標に一歩ずつ近づいています。

 通常角度でICBMを発射すると、日本上空を通過することになります。このため、ロフテッド軌道で弾道ミサイルを発射することで、日本上空通過を避け、同時に、ICBMを米国に見せつけることを狙っています。

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北朝鮮の弾道ミサイル開発の技術的課題

 弾道ミサイルが大気圏外に出て、再び大気圏に突入する際、6000度~7000度の高熱が発生し、弾頭表面の温度が上昇します。このため、弾頭を高温から守る技術が必要になりますが、北朝鮮はまだ、弾道ミサイルの再突入技術を得るまでには至っていないと見られています。

 また、射程1万キロ以上のICBMの場合、弾頭を200キロ前後に小型化しないといけませんが、こちらの技術も、北朝鮮はまだ確立していないとみられています。ただ、北朝鮮は核実験をこれまでに6回実施しており、小型化を着実に進めています。

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まとめ

 今回の弾道ミサイルは、中長距離の火星12でしたが、今後、より射程の長い大陸間弾道ミサイルを発射する恐れがあります。2017年、火星12を発射した後、大陸間弾道ミサイルの火星14、火星15を発射した例を見れば、その可能性は十分にあります。警戒が必要です。

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