ポンペオ米国務長官起用の理由は? 保守強硬派の登場で、トランプ政権の米外交はどうなるか?

 マイク・ポンペオCIA(中央情報局)長官(54)が2018年4月26日、米上院本会議で次期米国務長官として承認され、正式に就任しました。トランプ米大統領が、保守強硬派で知られるポンペオ氏を起用した理由は何でしょうか。また、北朝鮮情勢が動く中、新しい米外交はどうなるのでしょうか。ポンペオ氏の経歴と合わせて、探ってみました。

◇起用の理由は?

 北朝鮮情勢やイラン核合意、地球温暖化など主要外交問題をめぐって、トランプ大統領と、ティラーソン国務長官(3月末に辞任)の意見がことごとく対立したため、同大統領が、最側近のポンペオ氏を抜擢し、外交態勢の刷新を図ったものです。

 ポンペオ氏は、CIA長官として日々、機密情報報告するとともに、幅広く、内政、外交問題もトランプ大統領と協議したといいます。ポンペオ氏はバージニア州のCIA本部にはあまり顔を出さず、ホワイトハウスに赴くことが多かったそうです。

 トランプ大統領は、ポンペオ氏について、「信頼できる」「考え方が似ている」「波長が合う」などと記者会見などで述べています。

 一方、ティラーソン国務長官に対して、トランプ大統領は事前に解任を通告しませんでした。同長官は、トランプ大統領のツイッターで、自分の解任を知るという冷遇ぶりでした。

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トランプ大統領とアメリカ議会

◇トランプ大統領とティラーソン国務長官の意見相違は?

 では、トランプ大統領とティラーソン国務長官は、主要外交課題で、どう、意見を対立させたのでしょうか。それぞれの課題について探ってみました。

 ・外交姿勢

 トランプ大統領     「米国第一」を基本原則とし、内向きに傾斜。
 ティラーソン国務長官  国際協調路線を重視。

 ・北朝鮮の核・ミサイル問題

 トランプ大統領     経済制裁などによる圧力強化。状況次第で、軍事攻勢も辞さない。
 ティラーソン国務長官  対話重視。経済制裁などで問題が解決しない場合のみ、軍事攻勢を検討。

 ・イラン核合意問題

 トランプ大統領     合意の破棄を主張。
 ティラーソン国務長官  合意の継続を主張。

 ・地球温暖化問題

 トランプ大統領    「パリ協定」離脱を主張。
 ティラーソン国務長官  離脱に反対。

 こうして見て来ると、ティラーソン国務長官の解任が時間の問題だったとも言えます。ティラーソン国務長官が、トランプ大統領のことを、「ばか」などと言った報道もされています。

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 ◇◇経歴

 では、米外交をけん引するポンペオ氏とはどんな人物でしょうか。まずは、経歴を見てみましょう。

 1963年12月30日、カリフォルニア州オレンジ市生まれ。
 1982年に高校卒業後、陸軍士官学校に入学し、1986年、首席で卒業しました。
 1991年まで米陸軍機甲部隊に所属。
 その後、ハーバード大学ロースクールに入学、1994年に卒業しました。
 法律事務所で勤務後、2011年から下院議員を務めました。
 2017年から、CIA長官。
 2018年3月13日、トランプ大統領によって、国務長官に指名されました。

 ◇政治思想は?

 保守強硬派として知られています。具体的に、主要な外交政策について、その主張を見てみましょう。

 ・北朝鮮の核・ミサイル問題

  核開発路線を強行する金正恩独裁体制を批判、場合によっては、軍事攻勢で体制の転換を図ることも主張しています。

  CIAでは、北朝鮮情勢を分析する部署を昨年春に新設、北朝鮮に対する軍事作戦の立案・検討サイバー攻撃対策などにあたってきました。今後、6月上旬までに行われる米朝首脳会談を仕切ることになります。国務長官就任直前、ポンペオ氏は北朝鮮を極秘訪問、金正恩委員長と会談しました。

 ・イラン核合意

  合意の破棄を主張。

 ・地球温暖化問題

  「パリ協定」離脱を支持。

 そのほかにも、不法移民の排斥を訴えていますまた、。内政では、銃規制や中絶、ゲイに反対する立場を取っています。

 ◇まとめ

 ポンペオ氏は、トランプ大統領を支持する形で、国務長官に抜擢されてきただけに、政策が似通るのは自然なことですが、あまりにも、トランプ大統領の政策と共通点が多く見られます。

 米外交の中枢である国務長官が1年余で交代するのは極めて異例です。また、主要閣僚の多くもトランプ大統領との意見対立のために、次々に政権から去っていっており、トランプ色は一層、濃くなりそうです。ただ、孤立主義の傾向が強まる恐れもあり、世界各国との軋轢(あつれき)も増しそうです。

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