北朝鮮の非核化は実現するか 核関連施設の現状を探る 【わかりやすく国際ニュース】

 米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が2019年6月末、板門店で会談し、膠着状態に陥っていた非核化交渉を再開することで合意しました。両首脳の会談は3回目となりましたが、北朝鮮の核関連施設は解体されるのでしょうか。

 北朝鮮や朝鮮半島の非核化の行方、北朝鮮の核関連施設の現状を探ってみました(トップのイラストは、「いらすとや」のものです)。

 ◇核開発の主要拠点

 北朝鮮北西部の寧辺(ヨンビョン)が核開発の主要拠点となっています。同国は1960年代から、旧ソ連の技術を導入して、核開発を進めてきました。1980年代には、黒鉛減速炉を設置し、プルトニウムの生産を本格化させました。プルトニウムは長崎に投下された核爆弾の原料となった物質です。

 また、その後、北朝鮮は、高濃縮ウランの生産にも着手しました。高濃縮ウランは、広島に投下された核爆弾に使用された物質です。

 寧辺には現在、原子炉、ウラン濃縮施設、再処理施設、核廃棄物貯蔵施設など400近い核関連施設があると指摘されています。核物質はこれまでに、核爆弾約35個に相当する量が生産されたとも言われています。

 寧辺という地名は、北朝鮮の核開発の「代名詞」ともなっています。

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 ◇他の核関連施設

 核関連施設は国内各地にありますが、寧辺の近くの同国北西部に多くあるのが特徴です。以下のような施設です。

 順川 ウラン鉱山 

 博川 ウラン精錬工場

 泰川 ウラン濃縮施設

 亀城 ミサイル実験施設

 ウランを採掘
   ↓
 ウランを製錬
   ↓
 ウランを濃縮

 というプロセスが、この地域で連動していることがわかります。 

 他の地域に目を転じると、

 北東部 豊渓里(ブンゲリ) 核実験場施設

 南部 平山 ウラン精錬工場

 となっています。 

 ◇廃棄

 北朝鮮は、2018年6月の米朝首脳会談を前に、同年5月、東部・豊渓里(ブンゲリ)の核実験場施設で、坑道3か所を爆破、作業を外国記者団に公開しました。また、北西部・東倉里(トンチャリ)にある大陸間弾道ミサイル(ICBM)のエンジン実験場とミサイル発射台を廃棄することを表明しています。

 金正恩朝鮮労働党委員長は2018年9月、韓国との南北首脳会談で、「寧辺の核施設の永久放棄」を表明しました。また、同年10月には、プルトニウムの生産、ウラン濃縮の施設を廃棄・破壊することを約束しました。

 ◇ウラン濃縮

 北朝鮮は、プルトニウム生産から、ウラン濃縮に重点を移していると言われています。ウラン濃縮は、プルトニウム生産に比べて、高度な技術を要するものの、使用済み核燃料の再処理をしなくて済み、起爆装置が作りやすいためです。

 ウラン濃縮施設は地下でも稼働できるため、米国の偵察衛星の画像にとらえられないという利点があります。上記でみてきた核関連施設は、メディア報道されたものだけで、北朝鮮が秘密裏に、ウラン濃縮施設を「温存」している可能性もあります。

 そのひとつに、平壌郊外にあるウラン濃縮施設があります。寧辺のウラン濃縮施設に比べて、大幅に上回るウラン濃縮能力があるとも指摘されています。

 ◇まとめ

 こうして見て来ると、北朝鮮の核関連施設に大きな変化はないことがわかります。金正恩朝鮮労働党委員長による「寧辺の核施設の永久放棄」も何も進展していません。

 米国と北朝鮮関係は、非核化交渉再開に向けて動き出したものの、核の全面廃棄を訴える米国に対して、北朝鮮は小出しの核廃棄で経済制裁解除を目指す姿勢を取り、両国の溝は埋まっていません。

 北朝鮮の非核化はまだまだ、遠いものとなっています。

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