「多摩の風景 水彩画展」 起伏に富んだ多摩丘陵の四季折々の美しい景観をとらえる 多摩の魅力を再発見

 多摩丘陵は起伏に富むため、見る角度や光のあたり方などによって、さまざまな美しい表情を見せてくれます。その風景は、人々の暮らす建物や生活の様子とも調和し、一層、魅力的になります。

 そんな多摩丘陵やその近郊の四季折々の美しさを繊細な水彩で描いた「多摩の風景 他 水彩画展」が2019年も11月9日(土)から11月22日(金)まで、多摩センター駅南口の丘の上プラザ4階ふれあい広場で開かれています(写真は、水彩画展に見入る男性)。

 水彩画を開くのは、多摩市豊ヶ丘に住む鈴木徹さん(71)です。

 会社員時代の50歳過ぎ、当時、勤めていた東京・虎ノ門近くの建物やレストランの入り口、公園など街角の光景を水彩で描くようになりました。「ある日、突然描きたくなりました」と鈴木さんは回想します。

 昼食の時間は1時間でしたから、15分程度で昼食を終えると、小型のスケッチブックを携えて、街に出ました。水性ペンで下絵を描き、透明水彩で色を塗りました。

 「余った45分間という極限の条件で書き切るため、集中力を高めました」と鈴木さん。仕上げは自宅に帰って行いました。

 鈴木さんの水彩画はこのため、サイズが小さいのが特徴です。ポケットサイズのスケッチブックのものか、それよりやや大きい横長のパノラマ画になっています。「1日に1枚、多い時は4、5枚を描き、これまでに、その数は数百枚に達しました」と鈴木さん。

 今回はその中から、自宅周辺で書きためた115点の水彩画が展示されます。そのうち、都心の賑わいや東京湾の海辺の景色も数点展示されます。

 「落葉の坂道」
 「紅葉繚乱」
 「ゆく秋」
 「新緑の公園」
 「こもれび」
 「里山」
 「芝刈りのあと」
 「春うらら」
 「夜来の風雨」
 「銀雪の坂道」
 「ザ・プロムナード」
 「宵のカフェ」
 「切通しの線路」
 「中秋の多摩川」
 「月夜」
 「冬枯れの朝陽」
 「冬の夜明け前」

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 「多摩の夕陽」  多摩市桜ケ丘

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 「晩秋の坂道」   多摩市愛宕

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 「盛夏の公園」  多摩市豊ヶ丘

 タイトルを読むだけで、自然の景観の美しさが伝わってきます。

 葉の一枚一枚、木々の一本一本、橋の欄干の一本一本など細かい部分まで繊細に水彩の筆が及んでいます。水彩画を眺めると、多摩丘陵の美しさが浮き出してきます。水彩画を通して、多摩丘陵の散策を楽しむこともできます。 

 「何か強く惹きつけられるものを感じた時しか、絵筆を取りません。感動がないものは描けません」と鈴木さん。1枚1枚からは、風景の美しさに加えて、鈴木さんの感動が着実に伝わってきます。「タイトルを考えるのが楽しい」と鈴木さんが語るように、鈴木さんが描きたいイメージがタイトルに表れています。

 奥様や愛犬が公園の風景の中に登場する水彩画もあり、大切な家族を思う鈴木さんの温かさも伝わってきます。

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 「新緑の坂道」  八王子市別所

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 「銀雪の坂道」  多摩市豊ヶ丘

 鈴木さんのモットーは現場主義に徹することです。写真を撮影し、その写真をもとに水彩画を描く手法もありますが、鈴木さんは現場に出向き、自然の景観と対話しながら、1枚、1枚の水彩画をていねいに仕上げていきます。

 鈴木さんは、夕暮れが好きですが、太陽は数分で沈んでしまうため、しっかりと、その風景を脳裏に焼き付けます。また、台風の時はスケッチブックを開けることができません。この時もその風景の印象を頭の中に描きます。朝日を描く時は、朝4時、5時起きです。暑さ、寒さの中で描くことも多く、「体力勝負」(鈴木さん)でもあります。

 「立って描くことにしています。水性ペンで1本1本線を描くので失敗はできないからです。景色と向き合い、腹に力を入れて書きます。真剣勝負です」と鈴木さん。

 かつての水彩画展では、1枚の絵の前で、涙を流す人々もいました。「初夏のバス停」を描いた水彩画を見た女性はガン闘病中で、このバス停からよく通ったといい、苦しい思い出がこみ上げてきたのでしょう。また、理由あって多摩を去った女性も、「故郷」を思って涙があふれたといいます。

 鈴木さんの感動が、また、多くの人々の次の感動を呼んでいます。

 例えば、秋の紅葉は同じ場所でも、毎年、違う表情を見せてくれます。多摩の魅力を再発見する鈴木さんの創作活動は今後一層、忙しくなりそうです。多摩丘陵でどんな新たな再発見があるのか、鈴木さんの水彩画を見る私たちの楽しみも増しそうです。
 
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薄暮れの景色

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 水彩画の数々と、鈴木徹さん

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