イスラム国(IS)とは?③ なぜ、ISはソフトターゲットにテロ攻撃を仕掛けるのか

 イスラム過激派組織(IS)が、ソフトターゲットを狙ってテロ攻撃を行う姿勢を強めています。ソフトターゲットとは?また、ISはなぜ、ソフトターゲットを狙うのでしょうか(写真は、産経新聞の記事=8月6日付=。イスラム国が、ロシアに対して、ジハード=聖戦=を行うと発表。これに対して、ロシアが警戒を強めていることを報じています)。

 ソフトターゲットとは?

 警備や警戒などが比較的緩くて、攻撃のしやすい施設や場所、市民などの標的を指します。具体的には、劇場や映画館、レストラン、ホテルなど多数の人が集まる施設などが対象です。これに対して、軍基地や軍事施設、兵員などは警備などが厳しく、攻撃が難しいため、ハードターゲットと呼ばれます。どちらも軍事用語ですが、テロの激化で一般用語としても定着してきました。

 なぜ、今、ソフトターゲットがテロの対象に?

 攻撃のしやすさが一番の理由です。ほぼ無防備な施設、人物などが対象ですので、テロが失敗に終わる可能性がとても低くなっています。多くの人々が集まる場所で一度、テロを起こせば、死傷者も増えるため、ISの主張、脅威を一挙にアピールすることもできます。特に、ISはシリアやイラク、シリアなどで拠点崩壊に追い詰められており、小規模の攻撃部隊でテロを起こすことが難しくなっています。軍基地などに対しては、爆弾を積んだ自動車で突っ込む自爆テロを行うケースがあります。

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 ソフトターゲットへのテロは激化へ

 トルコからの報道によると、20日夜、同国南部ガジアンテプの結婚式場で爆発が起き、少なくとも54人が死亡、94人が負傷しました。犯行声明は出ていませんが、エルドアン大統領は、ISによる自爆テロであると述べました。
 昨年11月、フランス・パリ市内の劇場でのテロで130人が死亡したのをはじめ、今年3月のベルギー・ブリュッセルでのテロ事件(35人死亡)、今年6月の米コロラド州オーランドのナイトクラブでのテロ事件(49人死亡)、今年7月のバングラデシュ・ダッカの飲食店のテロ事件(日本人7人を含む20人が死亡)などが起きています。

 トラックで突っ込む

 今年7月14日のフランス革命記念日には、仏南部ニースの遊歩道で、男性が大型トラックで大群衆の中に突っ込み、銃撃するという事件が起き、少なくとも84人が死亡、202人が負傷しました。犯行声明は出ていませんが、この事件は、トラックを凶器にするという新たなテロ事件の一形態を示しました。IS幹部は、「爆弾や銃がなければ、刃物で人を刺し、トラックで群衆に突っ込め」と再三、指示していると言われます。
 貧困や差別を理由に、ISの主張に同調するイスラム過激派の若者も増えています。各国の警備当局は、テロ首謀者を水際で摘発する体制を強化していますが、こうした国内で育った過激思想の若者がテロに走る危険性も高まっています。

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イスラム国とは①、②の記事も合わせてお読みください。

 イスラム国とは?①

 国家を名乗っていますが、国際社会の通常の国家とは大きく異なります。国家形態・組織は整っておらず、イスラム国家樹立という自らの主張をテロを通じて訴える過激派組織になっています。イスラム国を承認した国家はなく、イスラム国が発行したパスポートも使用不可能です。世界各地で、テロを続行する手口を見ると、その特殊性が際立っています。・・・記事はこちらです。

 イスラム国とは?②

イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」がイラクやシリア、リビアで、重要拠点を相次いで失っています。各国政府軍などが米軍の空爆の支援を得て、ISの重要拠点を奪還したためです。ISは追い詰められてきましたが、窮地を脱するため、世界で再び、テロを起こすのではないかとの懸念も強まっています。警戒が必要です。・・・記事はこちらです。