放下着(ほうげじゃく)の意味は? 枡野俊明さんや平井正修さんの解釈 【心に響く禅語】

 執着心を捨てて、心穏やかに生きる。禅語の「放下着」には、こんな意味があります。「放下」は「捨てる」、「着」は、「何々しなさい」という命令形で、「放下着」は、「捨てなさい」ということになります。日常生活で、この「放下着」を実現するのはなかなか大変ですが、ぜひとも心掛けたい禅語です。

 建功寺(神奈川県)住職の枡野俊明さんは、著書「おだやかに、シンプルに生きる」の中で、「放下着」という禅語が生まれた経緯を説明しています。

 一人の禅僧が、師にたずねます。「放下着と言いますが、もう私はすべてを捨てきったという思いでいます。もはや捨てるものは何もありません。これ以上、何を打ち捨てろというのでしょうか」と。師はこれに対して、「捨てきったという思いさえも捨てなさい」と答えます。
 
 枡野さんは、「なかなか難しい禅問答ですが、それほどまでに、人間の心にとって捨てきるということは難しいことを表しています。執着心を捨てることが、ひいてはおだやかな心につながっていく。それがわかっていても、人はついさまざまなことに執着してしまうものです」と、「放下着」の難しさを説明しています。

 そのうえで、枡野さんは、「放下着」について、「『すべての思慮分別や経験などもいっさい捨てなさい』と教える言葉です」と解説しています。ビジネスパースンに向けても、「過去のキャリアや成功体験にしがみつくことは、仕事を後退させることと同じです」として、「放下着」の勧めを説いています。

枡野俊明さんの本「禅、シンプル生活のすすめ」を読んで 禅は深くてやさしい「生きる知恵」の宝庫 

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 全生庵(東京都)住職の平井正修さんも著書「男の禅語」の中で、この禅僧の厳陽(ごんよう)尊者と趙州禅師の対話を紹介したうえで、「何にも執着を持たず、一切をさっぱりと捨て去ること、無一物に徹すること。しかしそれは至難の業です。だから、『すべて手放しました』と言って、悟り臭さのようなものが残っているうちは、まだまだなのですね。何も言わずとも、なぜかその人と一緒にいると、まわりの人間がよき感化を受けていく。そんな人が本物なのでしょう」と書いています。

 平井さんは、男性よりも女性のほうが捨てるのが上手であることを指摘、「『ものと一緒に思いも捨ててしまう』というのはなかなか効果的な方法です。片づけや整理整頓も、まずは捨てなければ進みません」として、「まずは目に見えるものを捨てることから、始めてみればいい」と、「捨てる」ことを勧めています。

 ものを持たない生き方をしているミニマリストにも通じるものでしょう。

 私は4年前、海外駐在などのため、20年以上ほとんど住んでいなかった自宅マンションを全面リフォームしたことがあります。不要なものも多く、ひとつひとつ捨てるのに多大なエネルギーを費やしました。貯めこんでいても、役には立たない。運気を下げてしまうこともある。そんな思いを強くしました。

 最低限、必要なものに絞って生活する。そして、ものよりも、心穏やかに生きることを優先する。「放下着」の意味をたびたび、かみしめています。

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