ルペン党首(フランス極右・国民連合)の政策、主張は? どんな人(政治家)?

 フランス大統領選挙の第1回投票が2022年4月10日に行われました。再選を目指す現職のエマニェル・マクロン氏(44=共和国連合)が首位となり、極右・国民連合の女性党首のマリーヌ・ルペン氏(53)が2位となりました。この2人が4月24日の決選投票に進みました。歴代の大統領を輩出してきた2大政党の候補は惨敗しました。

 ルペン党首の政策、主張はどうなっているのでしょうか。また、どんな人(政治家)なのでしょうか。当選すれば、フランス初の女性大統領となるルペン党首についてまとめました。

ルペン党首(フランス極右・国民連合)の政策、主張は?

 マリーヌ・ルペン氏は前回2017年の大統領選でも2位となり、エマニェル・マクロン氏とともに、決選投票で戦いました。この時、マリーヌ・ルペン氏は、

 アマニェル・マクロン氏61.10%
 マリーヌ・ルペン氏  33.90%

 で大敗しています。

 ただ、2022年の今回は、世論調査機関IFOPによると、決選投票の得票率は、

 マクロン氏51%
 ルペン氏 49%
 
 になると予想しています。接戦となる見込みです。

 ルペン氏は2012年のフランス大統領選の第1回投票で、17.90%の得票を獲得、10人の候補の中で3位となりました。上位2人による決選投票には進めなかったものの、国民戦線(国民連合の前身)としては、最高得票率となりました。

 これまでのフランス大統領選の第1回投票結果を見ると、ルペン氏は

 2012年 3位
 2017年 2位
 2022年 2位

 となり、支持率を着実に伸ばしています。

 今や、ルペン氏は、国政を左右する政治家になったとも言えそうです。

 国民戦線は強硬な反移民、反ユダヤ主義を掲げる極右政党でしたが、2018年、穏健化を進めて国民連合に改称してからは、国民の不満を吸い上げる国民政党へと少しずつ変化してきたことがわかります。

 では、ルペン党首(フランス極右・国民連合)の政策、主張を見ていきましょう。 大統領選挙公約によると、ルペン氏は以下のような政策を掲げています。

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自国優先(フランス第一主義)

フランス国内法がEU(欧州連合)法に優越

 フランス国内法がEU(欧州連合)法に優越するとの政策を示しています。フランスの主権を重視する考えです。前回2017年の大統領選の時は、EUからの離脱の是非を問う国民投票の実施するとしていましたが、今回は、EUからの離脱までは考えていないとしています。

NATO(北大西洋条約機構)統合機構からの脱退

 NATO(北大西洋条約機構)統合軍事機構から脱退する方針を示しています。フランス軍が、米国など加盟国によるNATO合同軍の軍事指揮系統には入らないとの立場です。ただ、加盟国の一国が攻撃を受けた場合、NATOがこの加盟国を守ることを定めたNATO条約第5条から離脱することはないとしています。

物価高騰抑制対策

 ウクライナ危機に対処して、欧米諸国が対ロシア経済制裁を発動した影響で、他の欧州諸国と同様、フランスでも物価が高騰し、消費者生活を圧迫しています。

 この状況の中で、ルペン氏は、

 ガソリンにかかる付加価値税を20%から5.5%へ引き下げ
 高速料金の引き下げ
 公営放送受信料の廃止
 30歳未満の国民に対する所得税免除

 などの政策を主張しています。

 経済格差への不満が高まってきたことに着目した政策で、今回の大統領選での躍進の一因となっています。ただ、バラマキで、財源確保の見通しがないとの批判も強まっています。

移民政策

 移民政策は厳しいものとなっています。移民、難民の受け入れには制限を課すべきとの立場で、家族呼び寄せ制度の廃止を主張しています。イスラム教徒を対象に、公共の場でのベール着用禁止も訴えています。社会保障制度もフランス人にのみ適用すべきともしています。

定年退職年齢

 定年退職年齢を現行の62歳のままにすべきとしています。最低年金の引き上げも示しています。一方、マクロン氏は、定年退職年齢を65歳に引き上げると主張して、有権者の支持を失う結果も招いています。

ルペン党首はソフト路線を導入

 ルペン氏が決選投票に進出するまでに躍進したのは、同氏が、多くの国民が受け入れやすいソフト路線を取ってきたからです。まず、反ユダヤ主義のイメージを拭い去ることに努めました。父親のジャンマリ・ルペン氏は、マリーヌ・ルペン氏が党首になってからも、「ナチスのガス室は歴史の細部に過ぎない」などと、反ユダヤ主義を再三、強調したため、マリーヌ・ルペン氏は2015年、父親を除名しました。

 今、フランス社会には、エリートのEU官僚による政策で、国力が疲弊しつつあるとの危機感があります。仏経済が停滞し、失業率が増加しています。この中で、ルペン氏は、最低年金の引き上げなど低所得者層も意識した政策を打ち出して、現実路線を定着させました。ファミニズムを訴えて、女性票にも支持を浸透させました。

 フランスの自国優先(フランス第一主義)の訴えも、この中で、多くの国民にアピールするものになってきました。

 米国のトランプ前大統領はかつて、自由貿易推進を掲げるTPP(環太平洋連携協定)や温暖化対策・パリ協定からの離脱、米国優先の経済主権の復活、移民の大幅削減(メキシコ国境に壁建設など)、治安強化などを訴えました。国情から、同じ政策ではありませんが、ルペン氏と2人のトランプ前大統領の政策は底流で、よく似通っていることがわかります。

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ルペン党首は、どんな人(政治家)?

 

 ルペン党首は、どんな人(政治家)か、プロフィールや政治経歴で見てみましょう。

 マリーヌ・ルペン(Marine LE PEN)氏
 1968年8月5日、パリ近郊ヌイイシュルセーヌ生まれ
 53歳
 ジャンマリ・ルペン前国民戦線党首の3女
 パリ第2大学で、法学(主に刑法)を学び、弁護士として活躍。
 3児の母、2度、離婚を経験。

 マリーヌ・ルペン氏の主な政治略歴は以下の通りです。

 1986年 国民戦線に入党。
 1998年 ノールパドカレー地域圏議会議員。
 2003年 国民戦線副党首(全部で8人)。
 2004年 欧州議会議員。
 2007年 大統領選で、立候補した父の選挙対策責任者を務める。
 2009年 欧州議会議員に再選。
 2011年 国民戦線党首。党大会で、ナンバー2でリヨン大学教授のブルーノ・ゴルニッシュ氏を破る。 
 2012年 大統領選の第1回投票で、17.90%を獲得、3位に。
 2014年 欧州議会議員に3選。
 2018年 国民戦線の党名を国民連合に改称

幼少時代の辛い経験

 ルペン氏が8歳の時、父親のジャンマリ・ルペン氏暗殺を狙ったテロで自宅が爆破され、マリーヌ・ルペン氏も姉らとともに負傷しました。死はまぬがれたものの、この時、マリーヌ・ルペン氏は、いかに父親が国民に嫌われているかを理解したといいます。

 また、小学校では、極右政党の党首を父親に持つことから、いじめを受けました。

 幼少期の経験が、国民戦線をより大衆受けするソフト路線に舵を切る原点になっているとも言えかもしれません。

フランス初の女性大統領誕生か

 では、ルペン氏が、上位2人による決選投票(4月24日)で、フランス初の女性大統領に就任するでしょうか。現時点では、マクロン氏が優位で、ルペン氏を破るという世論調査が出ています。ただ、すでに書いたように、2人の得票予想は、

 マクロン氏51%
 ルペン氏 49%

 で、前回の2017年の大統領選に比べて、小差になっています。今回のフランス大統領選では、「まさか」、が起きる可能性を残しています。英国では2016年6月の国民投票で、EUからの離脱を決めました。また、2016年秋には、トランプ氏が米大統領に選ばれました。

 ポピュリズム(大衆迎合主義)の盛り上がりが背景にありました。

 フランスでも、ポピュリズムの動向で情勢が今後、大きく変化しそうです。

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まとめ

 フランスはドイツとともに、欧州統合をけん引してきました。自国優先(フランス第一主義)を重視するルペン氏がフランス大統領に当選すれば、拡大と深化を繰り返してきた欧州統合の歴史は大きく変わることになりそうです。

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