「水も過ぎれば毒になる 新・養生訓」 貝原益軒の名著「養生訓」をふまえた現代版の魅力は?

 日々の生活をどう健康的に過ごすか――。著書「水も過ぎれば毒になる 新・養生訓」は、江戸時代の名著「養生訓」をふまえ、ジャーナリストの東嶋和子さんが現代の医療、科学界の第一線で活躍する大学教授らに取材して得た最新の情報を盛り込んだものになっています。読み応えのある1冊です。

 「10年かけてたどりついた日本人のためのがん予防法。それが、300年近く前の『養生訓』にすでに書かれていたとは」

 国立がん研究センターの垣添忠生総長のこんな驚きの一言が、東嶋さんが10数年前に、江戸時代前期の儒学者・本草学者の貝原益軒が書いた本「養生訓」に出会った最初で、月刊「文芸春秋」のコラム「新・養生訓」を書くきっかけになりました。

 東嶋さんは、何が書いてあるのか、貝原益軒とは何者?という疑問符だらけで、「養生訓」を読み始めたそうですが、読み進めるうちに、疑問符が感嘆符に変わったといいます。

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 例えば、厚生労働省は科学的根拠に基づく予防法を随時、発表していますが、以下のようになっています。

1、喫煙 たばこは吸わない。他人のたばこの煙をできるだけ避ける。
2、飲酒 飲むなら、節度ある飲酒を。
3、食事 偏らずバランスよく。塩蔵食品、食塩は最小限に。野菜・果物不足にはならない。飲食物を熱い状態でとらない。
4、日常生活を活動的に。
5、体形 中高年男性のBMIで21~27、中高年女性で21~25の範囲内になるよう体重管理。
6、感染 肝炎ウイルス感染検査と適切な措置を。機会があればピロリ菌検査を。

 東嶋さんは、貝原益軒が喫煙や飲酒など6項目について、すべて、同じことを約300年前に書いていたことを強調しています。感嘆符の理由です。

 「新・養生訓」は、2005年11月からスタートし100回を超した「文芸春秋」のコラムをもとに、まとめたもので、

総論
飲食
五官/慎病
用薬/養老

の4章にわたっています。

東嶋さんがそれぞれについて、養生の方法を最新の医療、科学情報を紹介しながら現代版として解説しています。随所にユーモアもある文体で、楽しく読むことができます。

 ゆるゆる300歩で生活体力アップ
 寝すぎ寝不足で肥満
 熱中症のうまい対策
 コレス テロールは天使か悪魔か
 寝酒は眠りのためならず
 日焼けの功罪
 耳鳴りは脳が聞く
 ボケない生活習慣

 など記事のタイトルを見るだけで、読みたくなるものばかりです。

 貝原益軒には先見の明がありました。そして、何といっても、江戸時代に、84歳まで生きただけに説得力があります。

「養生訓」と「新・養生訓」を読み比べ ながら、自分なりの養生訓を見つけ出すのも面白いでしょう。

 貝原益軒は71歳で引退してから、「養生訓」 や「大和本草」「楽訓」「慎思録」などの著書を20冊以上、書いています。高齢になっても、意思があれば、健康に留意しながら、いい仕事ができることを教えてくれています。貝原益軒の生き方を一つのモデルに、自分の生き方を改めて構築するのもいいと思います。

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