「一日江戸人」(杉浦日向子著)は、江戸の文化、風俗を知る上での「教科書」と言えるでしょう。大道芸、奇人変人、長屋の生活、浮世風呂、師走風景、食、酒、相撲、春画考など江戸に関する情報が満載です。私はこの本をたびたび読み返していますが、面白いところや重要な個所に貼るポスト・イットは至る所に付いています。そのたびに、新たな発見があります(写真は、大根飯)。
三白、五白?
今回は、江戸時代の食についての文章を読んでいて、こんな表現に出会いました。本によると、江戸の味覚は「三白」に集約されるのだそうです。白米、豆腐、 大根が「三白」です。これに、鯛、白魚を加えると、「五白」になるといいます。どれも淡泊で、デリケートな味わいが共通するとしています。
「これらの『白』を制覇できれば、江戸一流の食通になれるのですが、あいにくと、私たちの舌は、これらに挑戦するには、あまりに『欧化』している点が気にかかります」
「ソース、スパイスを用いた味のハーモニーを楽しむ技術は持ち合わせていても、素材の奥行きそのものを堪能することには慣れていません」
文筆家の杉浦さんはこう書き、化学調味料やスパイス、ソースを1週間用いず、天然の塩だけで物を食べる「調味料断ち」を行うことをすすめています。そうすると、米の銘柄の違いや豆腐の豆の香り、大根の産地の違いがわかってくるといいます。
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「調味料断ち」。現代の我々には時に、必要になりそうです。食材が持つ美味しさをもう一度、考えてみるのも楽しいものです。「江戸人の舌」(同著)に近づくよう、早速、試してみようと思います。きっと、食の大切さを見直す機会になるはずです。
この本には、本の表紙にもあるように、漫画家としても活躍した杉浦さんのイラストが随所に書かれています。柔らかい文章だけでも十分に、江戸庶民の生活が連想できますが、明るくて、ユーモアたっぷりのイラストを見ると、江戸庶民が語りかけてくるような感じになります。
起きた時、あるいは、寝る前に、ちょっと手に取って、ページを開くことにしています。どのページを開いても、楽しく、江戸を体験できます。一歩、一歩、江戸に関する専門家になってくるようです。楽しく勉強できる、教科書以上の教科書とも言えそうです。