リーダーが座右の銘とすべき禅語とは? 今を生きるための禅語を本の「リーダーの禅語」から学ぶ

 リーダーが座右の銘とすべき禅語とはどんなものになるでしょうか。今を生きるための禅語を本の「リーダーの禅語」(桝野俊明著)から学んでみました。一語一語を読むと、自らの生き方を深く考えさせてくれます。リーダーだけでなく、誰にも役立つ1冊です。

 本の「リーダーの禅語」には「並のビジネス論より役立つ50の言葉」が紹介されていますが、そのうち、おすすめ7選の禅語を紹介します。

リーダーが座右の銘とすべき禅語とは? 今を生きるための禅語を本の「リーダーの禅語」から学ぶ

リーダーの条件

 枡野さんはまず、「リーダーの禅語」の「はじめに」で、リーダーは、

 風格
 育成力
 平常心
 行動力
 信頼力

 の5つが必要になるとして、それらを身につけるためのヒントとなる「禅語」を紹介しています。

 「現代のリーダーたちは、ともすれば忙しさに追われて、本質を見失ってしまいがちです。心にブレが生じ、リーダーシップを発揮できないことも少なくありません。ですから、物事の本質に迫り、仕事・人生の指南役となる『禅語』が役立つのです」

 枡野さんは、こう禅語の重要性を書いています。

リーダーが座右の銘とすべき7つの禅語とは

 リーダーが座右の銘とすべき禅語はたくさんありますが、特に、おもしろいと思った7つの禅語を挙げてみましょう。リーダーでなくても、役立つものはいくつもあります。

自灯明 法灯明

 自灯明 法灯明は、「世の中に、部下に、恥じない生き方ができるか」の「風格」に出てきます。

 自灯明 法灯明は、お釈迦さまが入滅される間際に残したとされる禅語だそうです。「自」は自分自身、「法」は教えを意味します。お釈迦さまは、「私がいなくなっても、私の教えは残っていく。真理を拠りどころとし、自分の心に行いの善・不善を問いかけることをやっていきなさい」とおしゃったそうです。

 自分の良心を拠りどころとする。そして、リーダーにとっては、「本質を見る目を養う」ことの大切さを、枡野さんは説明しています。枡野さんはそのうえで、自動車会社による燃費データの捏造事件を例にあげ、「良心」「本質を見る目」を欠いたために、この不祥事が起きたとしています。

 「世の中の心理をつかみ、ニーズを引き出し、工夫してつくったものは、まさに、『自灯明、法灯明』の産物。大ヒット間違いないでしょう」と枡野さんは書いています。

 リーダーでなくても、「良心」「本質を見る目」が大切であることがわかります。

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少欲知足 

 少欲知足は、「部下に何を伝え、組織をどう導くか」の「育成力」に出てきます。

 少欲知足は、やはりお釈迦さまがご臨終を迎える直前に示された最後の教えとされる「遺教経(ゆいきょうぎょう)」に出て来る禅語だそうです。

 「『まだまだ満足できない』と思っている人は、どんなにぜいたくな暮らしをしていても心は貧しい。『もっと、もっと』という思いにかき乱され、いつまで経っても心は枯渇感に支配され、幸福感を得られない。そういうことです」と枡野さんは書いています。

 そのうえで、枡野さんは、欲を持たないほうがいいかというと、そうではなく、「もっといい仕事がしたい。そうして世のため人のために尽くしたいという意欲は別物です」として、自分自身と部下の能力向上を「もっと、もっと」求めるべきだとしています。ただし、、自分にも部下にも多くを求めすぎず、成長速度が加速する「2割増し」を目安にするといいとしています。

 求めすぎない、ただし、自己の成長に向けて努力する。リーダーだけでなく、みんなに通じることでしょう。

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非思量

 非思量は、「『予期せぬこと』にどれだけ強くなれるか」の「平常心」に出てきます。

 禅の世界では、頭のなかを空っぽにして心を「無」の状態にすることを「非思量になる」というのだそうです。
 
 枡野さんはそのうえで、「背負うものが多いリーダーは、頭のなかが心配事や悩みでいっぱいになってしまいがち」であるとして、「時には頭を空っぽにする」ことをすすめています。

 そして、心配事に悩む弟子に、達磨大師が「その心配事を私の前に差し出してくれ」と言って、弟子が心配事を指し出せなかった実例を挙げて、「心配事には実体がなく、自分の心がつくりだしたものなのだ」とも枡野さんは書いています。

 平常心を保つことは簡単ではありませんが、平常心を保つよう心掛けることの大切さがわかります。

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放下着

 放下着(ほうげじゃく)も、「『予期せぬこと』にどれだけ強くなれるか」の「平常心」に出てきます。

 「リーダーに問われる『放下着』は、過去の栄光や成功にとらわれることへの戒めと読み解くといいでしょう」「禅では、『何もかもを打ち捨てなさい』と教えていますが、リーダーがいちばん捨てられないのが過去の栄光であり、成功なのです」と枡野さんは書いています。

 部下にとっては、そんなリーダーの過去の栄光ややり方は迷惑なだけだとして、枡野さんは、勇気を出して、過去の実績ややり方をスッパリ捨てるようすすめています。

 「『いま』やっていることで、『いま』ベストな方法を考え工夫することが、リーダーにとって一番大事なこと。過去を引きずっている場合ではありませんよ」として、枡野さんは、リーダーは「捨てる力」を磨くことが大切であることを強調しています。

 過去に引きずられない、そして、今を見つめて、将来を見据えるということの大切さでしょう。

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日々是好日 

 日々是好日は、「チャンスをつかむ『準備』はできているか」の「行動力」にでてきます。

 「日々の経験の積み重ねが、人間の厚みを作ります。その経験が多種多様になればなるほど、時期を見て的確な判断を下せるようになります。能力は磨かれるし、人の気持ちもわかるようになります。部下への指導力も増すでしょう」

 枡野さんは、日々是好日の禅語について、こう書いています。

 日々、いいことばかりに期待するのではなく、日々、起きることを経験の糧にして人間として成長する。たとえ、失敗したとしても、反省ができれば、失敗の理由がわかり、糧になる。

 一日を大切にして生きる――。そんな生き方を教えてくれる禅語です。

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冷暖自知

 冷暖自知も、「チャンスをつかむ『準備』はできているか」の「行動力」にでてきます。

 「器に入っている水は見ているだけでは冷たいのか、温かいのかわからない。実際に飲んでみるか、そこに手を入れてみるしか、知る手立てはない」

 枡野さんは、こう冷暖自知の意味を書いています。

 横浜名物・シウマイの崎陽軒の先代会長は、すでに大きな会社になったにもかかわらず、横浜駅で弁当を売り歩いたそうです。枡野さんは、これを冷暖自知の実践例としています。そのうえで、「リーダーこそ、現場で経験を積み、さまざまなことを『体感』することが重要なのです」と書いています。

 自分で考え、自分で行動してみる。そんな教訓を冷暖自知は教えてくれます。

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無功徳

 無功徳は、「人を惹きつける『実力』と『魅力』はあるか」の「信頼力」に出てきます。

 無功徳は、達磨大師の言葉です。「たとえ善行を積もうとも、あれをした、これをしたと周囲に触れ回ったり、見返りを期待しての打算的行為であったなら、それは善行とはいえない。真の信仰は、見返りを求めない無の心、真心からの祈り、行為であるということです」と枡野さんは解説しています。

 そのうえで、枡野さんは、「リーダーのみなさんも打算に走らず、見返りを求めず、ひたすら世のため人のため、会社のため部下のために仕事をしましょう。必ず、結果はあとからついてきます」と書いています。

 無欲で、みんなのために、自分の信じることをする。そうすれば、多くの人々の信頼を得られるということでしょう。

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著者の桝野俊明さんは?

 桝野俊明さんは、曹洞宗徳雄山建功寺の住職のほか、庭園デザイナーや大学教授としている方です。

 執筆活動も活発で、

 「心配事の9割は起こらない」
 「小さな悟り」
 「禅、シンプル生活のすすめ」
 「おだやかに、シンプルに生きる」
 「片づける禅の作法」
 「禅が教える人生という山の下り方」

 などの著書があります。どの本も読むたびに、新しい発見があるため、私はほとんどの本を読んでいます。

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まとめ

 7つの禅語を挙げましたが、「リーダーの禅語」には、ビジネスだけでなく、生きていく上で大切にしていきたい禅語がたくさんあります。

 一つの禅語については、それぞれ4ページで解説されています。最初から順に読んでもいいでしょうが、時間のある時に、できる限り、ページを開いて、何回も繰り返して読むのもいいでしょう。読むたびに、いろいろと解釈できて、心に響いてきます。



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