「思考の整理学」(外山滋比古著)の要約と感想 上 思考を高度化する、その手法は?

 評論家でエッセイストの外山滋比古さん(元お茶の水女子大学名誉教授、故人)の著書「思考の整理学」がロングセラーとなって売れています。本は1983年3月の初版以来、売り上げ部数は287万部を突破したといいます。東大や京大、早大などの学生が多く読んでいるそうです。

 今は文庫にもなっていますが、もう30年以上前に買った第2刷(1983年4月)の単行本で、「思考の整理学」を読み返してみました。本はすっかり黄ばんでしまいましたが、やはり、面白いなあ、というのが読後感です。手帳とノートの活用で思考を高度化する手法、「つんどく法」と呼ぶ読書法、独自のスクラップ術、の3つに改めて興味を持ちました。「思考の整理学」(外山滋比古著)の要約と感想を3回に分けて書きたいと思います。

思考の整理学 (ちくま文庫)

「思考の整理学」(外山滋比古著)要約と感想 上 思考を高度化する、その手法は?

 「思考の整理というのは、低次の思考を、抽象のハシゴを登って、メタ化して行くことにほかならない。第一次思考をその次元にとどめておいたのでは、いつまでたっても、たんなる思い付きでしかないことになる」

 「整理、抽象化を高めることによって、高度の思考となる。普遍性も大きくなる」

 外山さんは著書で、こう書き、情報を1次、2次、3次へと高める必要性を訴えています。思考の純化、高度化ということでしょう。

手帳とノートを活用

 外山さんはこのために、手帳とノートを活用しています。普通の手帳に、着想、ヒントを記入し、頭に通し番号をふるのだそうです。日付もケイも無視、1つの項を書いたら、線で区切るといいます。

 手帳に書いたら、しばらく寝かし、時間が経ったら、これを見返すのだそうです。寝かせている間に、面白くなくなってしまったものは捨て、やはり面白いというものだけ、今度は、別のノートに書き移すといいます。ノート1ページに1項目、見出し、手帳に書いた内容、さらに、新たに思いついたことを書くそうです。

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メタ・ノート

 私はこれだけでも十分だと思いましたが、外山さんはさらに、このノートを寝かせ、ノートにある思考、アイディアをもう一度、別のノートへ移すといいます。外山さんは、このノートを「メタ・ノート」と呼んでいます。

 「まだ生きているのも、動き出そうとしているものは、新しいところへ転地させてやると、いっそう活発になる可能性がある」と外山さんは書いています。

 このメタ・ノートは今度は2ページに1項目を使い、1冊目のノートの内容、そして、考える中で思いついたことなどを書き入れます。

 「メタ・ノートに書き入れたものはかなり重要なもので、相当長期にわたって関心事になるだろうと想像されるものばかりのはずである。だからといって、毎日のぞいてはいけない。記録してあるので安心する。しばらく頭から離す。テーマ自体も新しいコンテクストへ入れられた。さらに関心もいったんその問題から解放する。そうすると、思考はひっそり大きくなったり、あるいは消えるらしい」と外山さんは書いています。

 考え続け、その結果得た思考、アイディアを時間を置いて発酵させるということでしょう。ここまで丁寧に、高度化された思考は本当に役立つものになると思います。

思考の整理学 (ちくま文庫)

大テーマ用のノート、小テーマ用のノート

 外山さんはその後の著書「知的生活習慣」(2015年1月初版)で、まず、アイディアを紙に書き、大テーマ用のノート、小テーマ用のノートに、そのアイディアを書き写していることを書いていますが、もう30年以上前から行っている手帳、ノートの活用法が原点になっていることがわかります。

 大テーマ用のノートが43冊、小テーマ用のノートが73冊目、アイディアにはナンバーもふり、前者が4400以上、後者が15363に達しています。

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まとめ

 ソ連の政治家レーニンや作家の佐藤優さんのノート活用術にならうのもいいでしょう。

 本の重要部分の抜き書きや自分のアイディアをノートの左側に書き、右側は抜き書きなどによって思いついたこと(評価や反論など)を書いていきます。時間を置いて読み返し、思考を深めていきます。外山さんにならい、さらに、発酵させるプロセスを加えます。

 発酵、寝かせる、など時間の力もうまく借りることも大切です。

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