
幸福は偶然、手に入るものというイメージがあります。多くの方々がそんなふうに思うかもしれませんが、フランスの哲学者アラン(本名エミール・オーギュスト・シャルティエ、1868年-1951年)は、幸福は自分から追い求めて得るものである、ということを、その著書「幸福論」で繰り返し説いています。
幸福をつかみ取るために、強い意思を持って行動することが不可欠であることがわかります。
そんな興味深い「幸福論」ですが、「幸福論」の要約は難しいでしょうか。「幸福論」のおすすめの読み方はどうなるかも含めて、アランの本「幸福論」についてまとめました。
アランの本「幸福論」の要約は難しい?
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アランの「幸福論」思想の地平線シリーズは新しいスタンダードな風格があると思います。はい。 pic.twitter.com/mlV5APFBG6
— SBあおい書店 春日店 (@kasuga_aoi) August 8, 2025
アランの本「幸福論」の要約は難しいと言われています。
「幸福論」の訳者である石川湧さんは、「訳者あとがき」の中で、「あらゆる哲学的著者たちのうち、アランは・・・要約することの不可能な著者である」とのジョルジュ・パスカルの見解を示したうえで、自らも、「『幸福論』を要約することは不可能である」と述べています。
そして、具体的に、「『彼(アラン)はあらゆる事物に関心を持ち、愛の情念、政治的策略、画家の芸術、戦争、神についてと同様、馬の調教についても語る』と言ったモーロワ(アランの弟子)の序文(著書「プロポ」の巻頭序文)は、そっくりそのまま『幸福論』にもあてはまるだろう」としています。
アランは、
世界
人間
政治
宗教
文化
歴史
などについて、便箋2ページほどの短い記事をプロポ(語録)として書きました。「幸福論」も、「幸福についてのプロポ」となっており、多様な分野にわたる記事が集められたものだけに、要約が難しくなっています。
「幸福論」のおすすめの読み方は?
アラン『幸福論』(神谷幹夫訳、岩波文庫)読了。自分が思い描く幸福にぴったり合った内容だった。微笑むこと、身体を動かすこと、行動すること、弛緩すること。今まで読まずにいたのがもったいないくらい清々しくて、素敵な本だった。ヴェイユにふれて手にしたのもあって、いい師をもったなと思った。 pic.twitter.com/TIzEFZ9gsY
— 柚子瀬 (@ulysses525) August 12, 2025
では、「幸福論」のおすすめの読み方はどうなるでしょうか。
短い記事のプロポですから、好きなページを開いて読めばいいでしょう。1記事で完結された内容で、しっかり読み込むことができます。短い記事とはいえ、哲学者の濃密な考えや言葉が凝縮されていますから、読み応えがあります。
「アランの『幸福論』の特徴は、彼一流のユーモラスな表現に代表される明るく明晰な文体にある。本書はどこから読んでも差し支えないが、終盤の90~93章から読み始めていただくのが良いのではないかと思う。アランの考え方のエッセンスが詰まっており、80年以上経った現在でもまったく古びていないからだ」
京都大学の鎌田浩毅教授は、解説で、こう書いています。おすすめの読み方の指針となるでしょう。
「幸福だから笑うわけではない。むしろ、笑うから幸福なのだと言いたい」
先日お気に入りの喫茶店でポツポツと悩みごとを口にしてたら店主さんから薦めてもらったアランの「幸福論」、100年前の本とは思えないくらい処方箋になる言葉ばかりで心にしみる… pic.twitter.com/DSHFIQOWVL
— 滝沢貴大 (@takizawa_taka16) August 10, 2025
「幸福だから笑うわけではない。むしろ、笑うから幸福なのだと言いたい」(「幸福論」石川湧訳)
この有名なアランの言葉から、アランの幸福感を追ってみましょう。
鎌田教授は、「幸福論」の解説で、「幸福になりたくない人間はひとりもいない。にもかかわらず、その達成に向けて積極的に動こうとする人が多くないことをアランは見逃さない」と分析し、アランの考え方は、感情より理性の働きを重んじる理性主義と呼ばれることを指摘しています。
「幸福になることを欲し、それに身を入れることが必要である。幸福のはいるにまかせて戸を開けておくだけで、公平な傍観者の態度にとどまっているならば、はいってくるのは悲しみであろう」
「不幸だったり不満だったりするのは、むずかしくない。人が楽しませてくれるのを待っている王子様のように、座っていればよい」
「幸福になろうと望まないならば、幸福になることは不可能だ、ということである。だから、自分の幸福を望み、それを作らなければならないのである」
「悲観主義は気分に属し、楽観主義は意志に属する。されるままになる人間は悲しい」
アランの言葉は、深く考えさせられるものばかりです。
まとめ
白岩先生が下記のアランの『幸福論』(白水社)をツイートしておりました。広い視野で世界の幸福までをも深く語っております。
20代でアランの『幸福論』(社会思想社)を読み、懐かしさで本棚から出し、開いたら線引きが一杯でした!ですが、個人レベルの関心や課題を読んでいただけだと気づきました。 https://t.co/Z5q1gGKHnz pic.twitter.com/EPOmlhdT4x— Red (@7Hame2008) June 9, 2025
幸福を獲得するために、自らの意思に従い、行動する。アランの幸福論は、どこか、夢や目標を思い描き、潜在意識に働きかけ、そのために必要な行動を取るという潜在意識のシステムと共通するものであるようにも思えます。
不安が多い時、アランの幸福論は大いに勇気づけてくれるものになります。悩んだら、アランの「幸福論」を手に取り、読んでいくといいでしょう。愛読書になるはずです。
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