いい言葉を探して、新聞や本を読む 「古い美しいものは、新しいものを創造する鏡となる」 大佛次郎

 いい言葉を探して、時々、新聞や本を読むことにしています。いい言葉を見つけることで、自分の心との対話ができるからです。今回は、「50年後の再読 大佛次郎のエッセー」のタイトルで、神奈川新聞が連載している新聞記事で、こんな、いい言葉を見つけました。

 「古い美しいものは、新しいものを創造する鏡となる」―。

 味わいのある、深い言葉です。

 小説「鞍馬天狗」などで知られる大佛は横浜生まれで、1958年から1972年まで、神奈川新聞1面に随筆「ちいさい隅」を書き続けました。前述した言葉は、1964年11月10日に掲載されたもので、今年5月30日に、「50年後の再読」として再び、この随筆が紹介されました。

 「鎌倉の山や自然を守ろうとする運動が、やや具体的な形で行動に出ようとしている。逗子でも同じ動きがあるように聞いた。ほんとうは、少し遅かったのである」

 「京都、奈良、松江あたり、戦災を免れて残った古い都や土地が、同じく人災の被害を受けつつある。捨てておけば失われていく日本を、どうやって守って子孫に残すのかの重大な課題である。私どもは古い日本のよいもの、美しいものを公共のものとして是非とも保存していきたいと思う」

 「ひとつの訴え」と題した大佛の随筆は、自然や古い寺社などの町並みを後世に残す大切さを訴えています。私欲にとらわれ、自然を破壊したり、史跡や無形文化財を無くしてしまったりすることなどを批判、県や国に働きかけ、「古い美しいもの」を残すよう迫っています。

 この随筆は、鎌倉の御谷(おやつ)保存運動を後押しし、のちに、古都保存法が国会で可決される原動力となりました。「古い美しいもの」を直視する重要さがわかります。

 「座右の銘でもいい、尊敬する人の言葉でもいい、自分を省みることができるような書を家に飾ってみてはいかがでしょう。・・・それを見つめながら、心静かに自分に向き合う場と時間を持つことです」

 枡野俊明さんは著書「禅、シンプル生活のすすめ」で、こう書き、「好きな言葉を探す」よう勧めています。毎週土曜日に再掲載される大佛次郎の随筆が楽しみです。また、他の新聞や本で、どんないい言葉に出会えるか、目を凝らしながら、自分の心に問いかけながら、読書の旅を続けたいと思います。