人気フリージャーナリスト、池上彰さんの「学び続ける力」を読み返していたら、「ビジネス小説の魅力」として、ビジネス小説を読めば、さまざまな産業、企業の実態や、そこを舞台にした人生模様を学べることが書かれていました。面白い着眼点です。早速、学びたい習慣として取り入れたいと思いました。
「商社の海外駐在員がどんな暮らしをしているのか。銀行の支店の現場では、預金集めや融資の審査がどう行われているのか。下町の中小企業の工場で働く人たちの誇りと挫折。そういう人生や企業社会の仕組みを知ることができるのがビジネス小説の世界です」。池上さんはこう、ビジネス小説の魅力を書いています。
銀行や商社、メーカー、小売業など企業の名前は知っていますが、企業はどんな組織なのか、社員はどう働いているのか、あるいは、どんな問題を抱えているのかまでは明確にわかりません。小説は、作家によるフィクションですが、その企業や業界の実態を取材・調査して書いたものですから、企業の実像に迫ることができます。
小説の中で、主人公や登場人物はさまざまな選択を迫られます。池上さんは、「エンターテイメントとして楽しく読んでいくうちに、多くの知識が得られます。と同時に、自分が主人公だったら、こういう難局をどう乗り切るのか。二者択一の場面でどちらを選ぶか。生き方の問題として考える材料になります」とも書いています。
ビジネス小説というと、まず、英国に在住して、国際金融などの世界を描いている黒木亮を思い出します。融資銀行団の主幹事銀行(トップ・レフト)の座を巡ってしのぎを削る国際金融マンの姿を描いた「トップ・レフト」は一気に読んでしまった記憶があります。
巨大融資がどう行われるのか、敵対的買収(TOB)とは何か、弱肉強食の国際金融の臨場感を感じることができます。国際金融というと、難解というイメージがありましたが、小説を読んだことで、少しは理解が進んだように思いました。
山崎豊子の小説もよく読みました。銀行を舞台にした「華麗なる一族」や、巨大病院の実態を描いた「白い巨塔」などはテーマが新鮮で、インパクトがありました。
ビジネス界の深層に迫る―。ビジネス小説の魅力はこんなところにあるのでしょう。池上さんの言葉を胸に、城山三郎や、高杉良、深田祐介、池井戸潤らの作品ももう一度読み返したいと思っています。