栄西の「喫茶養生記」を原文と現代語訳で読む 茶は養生の仙薬なり

 「栄西 喫茶養生記」(講談社学術文庫、古田紹欽全訳注)は、「喫茶養生記」を原文と現代語訳で読むことができる一冊です。原文でわかりにくい箇所は現代語訳を照らし合わせることで理解が進みます。

 「茶は養生の仙薬なり」で始まる「喫茶養生記」は、「『養生の法』として喫茶を説いた茶書の古典」(あとがき)であることがよくわかります。

栄西の「喫茶養生記」を原文と現代語訳で読む 茶は養生の仙薬なり

 臨済宗の開祖である栄西(1141年-1215年)は、茶を愛し、留学先の宋から茶の種を日本に持ち帰りました。自ら植栽するとともに、お茶を飲むという習慣の普及に努めました。

 日本のお茶の始祖であり、今の緑茶ブームをもたらすことになった大先駆けとも言えるでしょう。緑茶の効能を早くから研究した一人です。

 現代語訳をチェックしてみましょう。

 「茶は養生の仙薬であり、人の壽命を延ばす妙術を具(そな)えたものである。山や谷にこの茶の木が生(は)えれば、その地は神聖にして霊験あらたかな地であり、人がこれを採って飲めば、その人は長命を得るのである」

 「茶を喫すれば、心臓が強くなって病を無くすることができる」

 「中国大陸にあっては、日本と違って苦味として茶を喫しており、そのためにその国の人々は、心臓の病がなく、また長命である」

 「もし心神が不快なときは、必ず茶を喫するのがよい。心臓の調子を整えれば、万病を除き治すことになるのである」

 「栄西 喫茶養生記」を読むと、こんな茶の効能が書かれています。

 茶は奈良、平安時代にも飲まれていましたが、貴族や僧らの上流社会のものでした。栄西の茶の種の輸入、そして、「喫茶養生記」が読まれることで、茶は庶民の間でも広く愛飲されるようになりました。

 栄西は建仁寺を開山して、臨済宗を開いたことで知られますが、茶の普及という点でも日本の文化史で大きな功績を残したことがわかります。

栄西 喫茶養生記 (講談社学術文庫)
栄西 喫茶養生記 (講談社学術文庫) [ 古田 紹欽 ]

 栄西は74歳まで生きました。当時としては、長生きで、茶の効用を自ら立証したとも言えます。

 茶には、

 ガン
 老化
 肥満
 心疾患
 高血圧

 などを予防し、ストレスを緩和する効能があります。

 1日5杯以上、緑茶を飲む人は、1杯未満の人に比べて、死亡するリスクは、男性で13%、女性で17%低かったという調査結果もあります。緑茶をそのまま食べると、摂取率がよくなるとも言います。

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まとめ

 「喫茶養生記」をじっくり読み込むのはもちろんですが、お茶に関する本を広く読み、茶の効能を研究するといいでしょう。

 栄西は平安時代末期から鎌倉時代初期を生きた僧ですが、栄西の人生を知ると、当時の宋が制度や文化などで大きく日本をリードしていたことがわかります。

 留学した僧によって、宋の制度や文化が日本にもたらされました。当時進んでいた宋など中国の歴史や、その文化を日本に紹介した僧の功績も学ぶのも楽しそうです。

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