来年春のフランス大統領選に向けて、野党・共和党をはじめ中道・右派陣営の統一候補を選ぶ予備選の決選投票が11月27日に行われ、共和党のフランソワ・フィヨン元首相(62)が、2位のアラン・ジュペ元首相(71)に圧勝しました。現時点で、与党・社会党のフランソワ・オランダ大統領(62)は支持率が低迷しており、来年春の大統領選では、フィヨン元首相と、極右のマリーヌ・ルペン女性党首(48)が第1位、2位になると見られています。大統領選に向けて、中道・右派陣営の統一候補となったフィヨン元首相は、マーガレット・サッチャー英元首相にならって、サッチャー流の自由主義経済を推進することを強調しています。プロフィール(横顔)をまとめてみました。
予備選挙
11月20日に行われた予備選の第1回投票では、フィヨン元首相が最終盤の追い上げで、共和党のジュペ元首相(71)らに勝利しました。大統領返り咲きを目指す共和党の二コラ・サルコジ(61)氏は3位に終わり、敗北を認めて、政界引退を表明しました。サルコジ氏と4位となったルメール元農相(2.6%獲得)は、決選投票で、フィヨン元首相を支持することを表明しました。
第1回の予備選で過半数を得た候補がいなかったため、27日に上位2人で決選投票が行われました。27日夜(日本時間28日午前)の選挙管理委員会の発表によると、開票率約93%の段階で、フィヨン元首相が66.8%を獲得、33.2%獲得のジュペ元首相に大差をつけて勝利しました。
フランソワ・フィヨン(Francois Fillon)氏
1954年年3月4日生まれの62歳。
フランス・サルト県ル・マン出身。
地元メーヌ大学、パリ第5大学で公法の博士を取得、国立政治学研究院で政治学の博士を取得しました。
ペネロブ夫人との間に、5人の子供がいます。
敬虔なカトリック教徒で、同性婚の合法化法案に反対しました。
政治
1976年、サルト県選出のジョエル・ル・トゥル下院議員の公設秘書となったのを皮切りに、政治に関わり、1981年、ジョエル・ル・トゥル氏の死去に伴い、下院議員選に出馬し、当選しました。当時27歳で、全国最年少の議員でした。以来、7選、2012年にはパリ2区から出馬し、8選を果たしました。フランスでは、下院議員と地方首長も兼務できるため、サブレ・シュル・サルト市長(1983年-2001年)も務めました。2007年の大統領選では、大統領に就任したサルコジ氏の選挙参謀として、サルコジ氏の勝利に貢献しました。
主な閣僚経験
1993年 4月-1995年 5月 高等教育・研究相
1995年 5月-1995年11月 情報技術・郵政相
1995年11月ー1997年 6月 郵政・電気通信・宇宙担当相
2002年 5月-2004年 3月 社会問題・労働・連帯相。
2004年 3月-2005年 6月 国民教育・高等教育・研究相。
2007年 5月-2012年 5月 首相(第1次、2次、3次まで)
閣僚時代、法律制定を主導したことから、「フィヨン」の名前を冠した法案が2つあります。一つは、労相時代に制定した「賃金・労働時間・雇用促進法」で、「フィヨン法」と呼ばれました。週35時間労働制の緩和を内容とするものでした。もう一つは、国民教育・高等教育・研究相時代に、バカロレア(大学入学試験制度)の改革を目指した「フィヨン教育法」です。高校生の抗議行動を招き、大きな論争となりました。改革法案の一部修正を強いられました。
政治信念
サッチャー流の自由主義経済をモデルに、大胆な経済改革を目指しています。「小さな政府」が目標で、「フィヨン氏が大統領になれば、フランスの経済モデルを大きく変える革命が起きるだろう」と予測する政治学者が多くいます。すでに労相時代に制定した「賃金・労働時間・雇用促進法」などにその一端が現れていますが、フィヨン氏が掲げる政策は以下の通りです。
・週35日間労働制を廃止し、週39時間労働時間にする。
・公共部門の人員を50万人削減、歳出を圧縮する。
・消費税を2%引き上げる。
・法人税を減額する。
・福祉制度の見直しで、歳出を圧縮する。
今後の大統領選の展望
2017年4月に投開票されるフランス大統領選では、現職のオランド大統領、フィヨン元首相、そして、ルペン党首が有力候補になるものと見られています。しかし、オランド大統領は相次ぐテロや経済低迷で支持率が20%を切る不人気にあえいでおり、第1回投票では、フィヨン元首相と、ルペン党首が1、2位を占めると予想されています。第1回投票で過半数を獲得した候補がいない場合は決選投票が行われますが、現時点では、フィヨン元首相がルペン党首に勝利するだろうと見られています。
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