EUから完全離脱したイギリスのメリット、デメリットは? 関税、移民、通商問題で

 イギリスが2020年12月末、EU(欧州連合)と自由貿易協定(FTA)を結ぶことなどで合意し、1年間の移行期間を経て、EUから完全に離脱しました。完全離脱したイギリスのメリット、デメリットは何でしょうか。関税、移民、通商問題などで、今後の展望も含めてイギリスの政治、経済情勢をまとめました。

EUから完全離脱したイギリスのメリット、デメリットは?

 早速、イギリスのメリット、デメリットを項目別にチェックしてみましょう。

関税

メリット

 イギリスがEUから離脱することは、EU加盟国同士の貿易で関税をゼロとした関税同盟を外れることを意味しましたが、EUとの自由貿易協定(FTA)で、すべての品目で関税をゼロとしたことで合意しました。

 イギリスは、EUとの貿易が全体の貿易の約50%を占めています。これまで通り、関税ゼロで貿易できるのは、大きなメリットになりました。

デメリット

 ただ、イギリスは、人、モノ、サービス、資本のEU域内の自由移動を定めた「単一市場」を外れたため、国境での通関手続きが復活しました。これまでに比べれば、書類審査や積荷検査などで時間や手間がかかることになり、物流の混乱が起きる恐れもあります。

移民政策

メリット

 イギリスは、「単一市場」を外れたため、独自の移民政策を取れるようになりました。ビザ審査の際、入国の条件として一定の年収を課すなどでして、移民を抑制するものとみられます。

 2004年以降、中東欧諸国がEUに加盟したことで、ポーランドなどから、EU域内で2位の経済規模を持つイギリスに移民が流入するようになり、イギリス国内では、「移民のため雇用が少なくなる」「治安が悪化する」などの不安が高まりました。

 こうした不安は、EU離脱を求める英国民の大きな世論になっただけに、移民流入の抑制策を今後、取れるようになったのは、EU離脱の大きなメリットになりました。

デメリット

 ただ、中東欧諸国からの移民は、低賃金で雇用していたケースが多く、安価な労働力が不足する恐れもあります。また、移民抑制の流れの中で、高度な知識を持った専門職の移民も締め出してしまう可能性もあります。労働力の低下が懸念されます。

 現在は、新型コロナウィルスの感染が英国内で拡大しています。医療、介護に必要な労力が足りなくなることも考えられます。

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漁業権

メリット

 イギリスのEU離脱については、2020年の1年間、移行期間が設けられ、離脱に伴う貿易交渉が行われてきましたが、その中で難航したのが、英海域での漁業権でした。今回のFTAでは、EU側の漁獲量を今後5年半で25%削減するとともに、以後は毎年、協議して漁獲量を決めることを定めました。イギリスの漁業権が認められました。

デメリット

 ただ、英国内の漁業団体は、EU側漁獲量や今後の交渉方法に不満を抱いています。国会でも、英国内の漁業団体に配慮する議員も多く、この漁業権が承認されるかどうかは不透明になっています。 

独自の通商政策

メリット

 イギリスはEU加盟中、EU共通の通商政策を順守しなくてはなりませんでしたが、EUを離脱したことで、独自の通商政策を取ることができるようになりました。イギリスと日本の「日英包括的経済連携協定(EPA)」が2021年1月1日、発効しました。今後は、他の国とも自由貿易協定(FTA)を締結する準備を進めています。

デメリット

 ただ、経済大国・米国との自由貿易協定は締結に向けて難航しそうです。食品の安全基準が両国で大きく異なっているためです。米国のバイデン次期大統領は、国際協調を外交政策の基本に据え、イギリスのEU離脱も批判していただけに、イギリス―米国関係がどうなるか今後も注視する必要があります。

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まとめ

 こう見て来ると、メリット、デメリットがいろいろあることがわかります。今後の進展が注目されます。

 今回のイギリスのEUからの離脱は、2016年6月に行われた国民投票の結果を受けて推し進められたものでした。この国民投票の結果は、離脱支持51.9%、残留支持48.1%で、EU残留を望む英国民も半分近くいました。

 特に、スコットランドでは、EU残留を望む人々が多く、イギリスから独立して、独自にEU加盟を目指す動きが強まっています。そうなった場合は、連合王国が分裂する事態となります。

 連合王国内の動きにも目を向ける必要がありそうです。

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