TAG(物品貿易協定)とは? FTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)との違いは?

 日本と米国が2019年初めにも、「物品貿易協定」(TAG)の締結を目指して、新たな通商交渉を行うことになりました。TAGとはどういう協定なのでしょうか。また、FTA(自由貿易協定)や、EPA(経済連携協定)とはどう違うのでしょうか。日米の新たな通商問題を探ってみました。

 ◇TAGとは

 Trade Agreement on Goods

 の略で、日本語では、物品貿易協定となります。

 工業製品や農林水産品などすべての物品の輸入に関して、関税の引き下げや撤廃を国家間で定める協定です。物品の輸出入を活性化することで、両国間の貿易量の拡大、利益アップを促す狙いがあります。

 ◇FTAとの違いは?

 TAGの適用範囲をさらに拡大したのがFTAです。
 
 FTAは、Free Trade Agreement

 の略で、日本語では、自由貿易協定となります。

 工業製品や農林水産畜産物などすべての物品の輸入に関して、関税の引き下げや撤廃(TAG)
    +
 サービス分野の輸入に関して、関税の引き下げ、撤廃

 を図ります。

 北米自由貿易協定がFTAに該当します。

 ◇EPAとの違いは?

 FTAの適用範囲をさらに拡大したのがEPAです。

 EPAは、Economic Partnership Agreement

 の略で、日本語では、経済連携協定となります。

 工業製品や農林水産畜産物などすべての物品の輸入に関して、関税の引き下げや撤廃(TAG)
    +
 サービス分野の輸入に関して、関税の引き下げ、撤廃(FTA)
    +
 知的財産保護や投資、電子商取引などのルールの非関税分野も討議

 という内容になっています。 

 環太平洋連携協定(TPP)や、日欧経済連携協定がEPAに該当します。 

 ◇TAG、FTA、EPAの違い

 こうして見て来ると

 TAG
  ↓
 FTA
  ↓
 EAP

 の順に、通商協定の適用範囲が広がっています。FTAもEPAも、TAG同様、両国間の貿易量の拡大、利益アップを図ろうとする狙いがありますが、EAPが最も包括的な通商協定になっていることがわかります。

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 ◇日米の思惑の相違

 新聞報道によると、安倍晋三首相はTAGについて、「これまでの包括的な自由貿易協定(FTA)とは全く異なる」と強調しています。また、茂木敏充経済再生担当相も「物品貿易に限定されたもの」との立場を説明しています。

 そのうえで、TAGに関する通商交渉の間は、米国が検討している自動車への追加関税は発動しないこと、農林水産品については、環太平洋連携協定(TPP)で合意した水準までにしか関税を引き下げないことを確認したとしています。

 ただ、米国は、TAGはあくまで通過点で、FTA締結に意欲を示しています。2018年9月末、安倍首相とトランプ米大統領の首脳会談で発表された共同声明にも、TAG協議後に、サービスや投資分野も交渉することが盛り込まれました。まさに、米国側の姿勢を示したものになっています。米メディアでは、今回のTAGをFTAとして報じているところもあります。

 ◇TAGでなぜ、この違いが出たか

 トランプ米大統領は、米国のTPP離脱後、2国間の通商交渉を推進するよう各国に働きかけています。日本は、多国間通商協議が必要として、米国にTPPに復帰するよう求めてきましたが、ここにきて、トランプ大統領が、自動車への追加関税発動をちらつかせて、日本に2国間通商交渉を迫ってきたため、この追加関税を回避する狙いで米国との2国間通商交渉に応じることになりました。

 自動車への追加関税の発動回避、農林水産品への関税はTPPの水準まで、の2点は、日本にとって、大きな成果となりました。

 今後の通商交渉の焦点は、

 ・米国による自動車への追加関税の発動は回避され続けるのか
 ・牛肉など農林水産品への関税はTPPの水準に維持されるのか
 ・鉄鋼、アルミニウムの輸入制限はどうなるのか

 などとなります。

 ただ、これまで見たように、米国は、TAG後のFTAを見据えており、今後、TAG交渉は難航する可能性が高まりそうです。

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