貝原軒益が著書「養生訓」で説いた「五思」とは? 感謝して、ものをいただく 【偉人のスタイル】

 江戸時代の儒学者、貝原益軒は著書「養生訓」の中で、ものを食べる時は5つのことを考えなくてはならない、と書いています。ものの恵みに感謝して食べる――。益軒は、これを「五思」と名付けています。見習いたい生き方です。

貝原軒益が著書「養生訓」で説いた「五思」とは?

 「五思」の一番目は、この食は誰から与えられたかを思うことです。父か、殿様か、兄弟か、親戚か、他人か、その与えてくれる人を思うことを説いています。

 二番目は、食が農民の苦労で作り出されたことを思うことです。

 三番目は、おいしいものを食べることができるのはひどく幸せであると思うことです。

 四番目は、世間には自分より貧しい人が多く、飢え死にする者もいるが、自分は上等な食事を十分に食べて飢えることがないことを思うことです。

 最後に、五番目は、大昔は米や麦、粟などは取れず、草木の根や葉を食べながら飢えをまぬがれていたが、今は、白い飯、吸い物、惣菜を朝夕2回、食べることができることを思うことです。

 そのうえで、益軒は、「朝食や夕食をするたびに、この五思のひとつでも二つでもよいから、かわるがわる思い起こして忘れてはならない。そうすれば、日々の楽しみもまたその中にあることに気づくであろう」と書いています。

 「五思」に出て来る「殿様」や「飢え」、「朝夕2回の食事」など今の時代とは異なる、やや古い部分もありますが、ものに感謝する精神は大切にしたいものです。

「いただきます!」という日本語

 「いただきます!という日本語は、あなたの生命を私の生命に替えさせていただきますという素晴らしい言葉なんですよ」。

 佐藤伝さんも著書「10歳、若くなる習慣」で、インターナショナルスクールの校長が子供たちに語った言葉を紹介しています。そのうえで、「感謝と決意の祈りをするからこそ、食べたものはきちんと血と肉に変わり、エネルギーになるのです」と書いています。

 もう20年以上前になりますが、私がインドに駐在した時には、日本食レストランや日本食料品店がなかったため、日本料理を食べることができませんでした。いつも、寿司が食べたいなあ、かつ丼が食べたいなあ、などと日本食に恋い焦がれました。

 シンガポールやバンコクに出張した時には、日本料理を食べ、日本食料を大量に買い込み、苦労してインドに持ち帰ったものです。

 日本食を食べた時には、感謝の気持ちが自然に生まれてきました。

まとめ

 今、食べる時には、感謝の気持ちが薄れているように思えます。貝原益軒の教えに習い、「五思」のうち一つでも、食事の時に思うようにしたいと考えています。

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