アメリカのバイデン政権がイラン核合意に向けて動いています。イラン核合意とは、どんな取り決めでしょうか。わかりやすく解説します。経緯や問題点、アメリカ復帰なども含めて、イラン核合意についてまとめました。
イラン核合意とは? わかりやすく解説
イラン核合意とは 経緯
2015年7月、核兵器開発疑惑のあったイランと、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、中国、ロシアの米欧諸国が結んだ国際的な取り決めです。2013年、対外融和路線のロハニ師が大統領に就任したことが背景にあり、オバマ米大統領の主導で、イラン核合意が結ばれました。
合意内容は大枠で、以下のような図式になっています。
核開発の制限
イラン 米欧諸国
経済制裁の緩和
イランは、核開発を制限する見返りに、経済制裁を緩和してもらうことになっています。まずは、この図式をインプットしておくことが大切です。
イランは
そして、イランは具体的に、
・高濃縮ウランや、核兵器開発ができるレベルのプルトニウムを、それぞれ15年間生産しない
・ウラン濃縮度の上限は3.67%、低濃縮ウラン貯蔵量は300キログラム未満とする
・ウラン濃縮用の遠心分離機を大幅に削減する
などで、核開発の制限を行うこととしています。
米欧は
これらのイランの核開発制限に対して、米欧諸国は具体的に、
・金融制裁を緩和する
・原油輸出制限を緩和する
としています。
イランがこれらの核開発の制限を順守したことから、米欧諸国は、イランに対する経済制裁を解除しました。
世界年鑑2020
世界年鑑2020 [ 一般社団法人共同通信社 ]
イラン核合意の問題点
問題点としては、まず、2018年5月、米国のトランプ大統領(当)が、「イラン核開発制限の期間が15年というのは重大欠陥である」として、イラン核合意から一方的に離脱し、経済制裁を再開したことです。オバマ大統領の政治的レガシー(遺産)を覆すという側面も強くありました。
イランはこれに反発して、2019年5月から、ウラン濃縮度の上限3.67%を上回る核開発を開始しました。2021年1月4日には、濃縮度20%のウラン生産を始めました。核兵器製造には、濃縮度を90%にすることが必要ですが、濃縮度20%のウランを生産できれば、90%への引き上げが容易となります。
この間、欧州諸国は、米イラン対立の中で、イラン核合意修復のために何も有効策は打ち出せないままでした。
イラン核合意に米国が復帰の意向
米国のトランプ大統領の後を受けたバイデン大統領は2月18日、イラン核合意への復帰に向けて、イランと対話する意向を示しました。ただ、米国は、イランが核開発を制限することが先決としていますが、逆に、イランは、経済制裁解除が先として、真っ向から、方針が対立しています。
イラン史 (YAMAKAWA Selection(山川セレクション)) [ 羽田 正 ]
まとめ
、
イラン核合意は、ウランの濃縮度に上限を設けることで、たとえ、イランが核兵器の製造に踏み切ったとしても、実際の完成までには1年以上を要するという枠組みを作ったものでした。核兵器開発を抑制するという点で、重要な合意でした。
バイデン大統領が、この枠組みを回復できるのか、今後の動きが注視されます。
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