「無功徳(むくどく)」という禅語は、大切にしたい生き方を示してくれる言葉の一つです。無功徳とは、どんな意味の禅語でしょうか。また、無功徳の出典は達磨大師でしょうか。建功寺(神奈川県)住職の枡野俊明さん、境野勝悟さん、そして、全生庵(東京都)住職の平井正修さんの著書から、「無功徳」についての解釈をまとめてみました。
無功徳とは? どんな意味の禅語? 無功徳の出典は達磨大師?
#一日一禅 溜め込んでしまい一日二禅でも追いつけません。すみません。
①無功徳/碧巌録より
役に立つ事をした。だから良い事が返って来るだろう。
…じゃない。
果報を期待しない。
行いはそれで完了。正しい事をする、それだけ。
(でも悪い事をしたら、たぶん悪い事が返って来る)
スレッド続く pic.twitter.com/pWMvchn76y— 正眼短大/禅の学校 (@shogentandai) June 17, 2024
3人の方とも、まず、禅語の「無功徳」が達磨大師の言葉であることを指摘しています。
枡野さんの著書「おだやかに、シンプルに生きる」によると、昔、梁(りょう)という国に武帝がおり、その武帝が、自分は仏教の興隆のためにお寺を自費で建て、一生懸命、写経もしてきたといいます。そのうえで、武帝は「いったいどのような功徳が私には与えられるのでしょうか?」と達磨大師に尋ねました。
これに対して、達磨大師は一言、「無功徳」と答えました。枡野さんは、「要するに、禅的な行為というものは、いっさいの果報を求めないことが基本なのです」と解説しています。
深く考えさせられる言葉です。
おだやかに、シンプルに生きる (PHP文庫) [ 枡野俊明 ]
境野さんも著書「心がスーッと晴れる一日禅語」の中で、「たとえ、友だちにいいことをしたり、いいものをあげても、あれもした、これもしたと、恩に着せたり、鼻にかけたり、お礼をいわれたりしようとしない。まず、人にものをあげる余裕のあることに感謝せよ・・・と。人に親切にしても、ご利益は求めない」として、「見返りを期待しない」ことが大切であることを強調しています。
【中古】 心がスーッと晴れる一日禅語 「あらゆる迷い」を解決するヒント 知的生きかた文庫/境野勝悟【著】
また、平井さんも著書「男の禅語」の中で、「『したことは報われるはずだ』と考えているから、苦しみがはじまるのです。・・・見返りを求める心から解放され、『自分がしたことは、やっただけで終わり』となるのなら、余分な負担がなくなり、常に心を軽くして生きられるに違いありません」として、境野さんと同様、「見返りを期待しない『潔さ』」の重要性を説いています。
見返りを求めない。そうすることで、穏やかな心を保つ。そんな生き方の大切さがわかります。なかなか実践が難しいですが、常に心に留めておきたい禅の言葉です。
【中古】 男の禅語 知的生きかた文庫/平井正修(著者)
男の禅語 「生き方の軸」はどこにあるのか【電子書籍】[ 平井正修 ]
無功徳のまとめ
《無功徳》
功徳とは善い行いに対する報酬のようなもの。しかし功徳を得るために下心をもって善い行いをしても、功徳は遠ざかってしまいます。善行はあなたの利益のために行うものではありません。見返りを期待せず無心で行うことが大切なのです。善い行いに出会えた縁にに感謝を— 仏の教えwords of wisdom (@namutyan) October 3, 2024
「『努力をすれば必ず報われる』という言い方があります。その通りだと思います。ただし、『報われる』というのは、成果が出るという意味ではなく、その本当の意味は、自分自身の人生が豊かになるということです。人生とは、淡々とした小さな努力によって善(よ)きものになっていくのです」
枡野さんは、こう解釈しています。
小さくても日々、努力を積み重ねる。そして、自分の人生を自分の理想に近づけ、豊かなものにしていく。「無功徳」は、「努力」という言葉の意味をも問い直すものになります。
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