作家の佐藤優さんは、ソ連を作った政治家ウラジーミル・レーニン(1870-1924年)を「ノート作りの一番の天才」と称賛していますが、「知的トレーニングの技術」でも、著者の花村太郎さんが「ノートのとりかたはレーニンに学ぶといい」と書いていま す。改めて、レーニンのノートについて考えてみました。
ノート作りの天才、レーニンに学ぶ 抜き書きとコメントで自分だけの書物を作る
レーニンのノートは、誰もが見習うべき手本と言えるでしょう。天才と言われる由縁です。
佐藤さんの本「読書の技法」によると、レーニンはいつも逃げ回るような生活をしていたため、主に図書館で借りて読んだ本の抜き書きをノートに写し、コメントを加えました。重要な部分を強調して、自分の意見を付記するとともに、
「機知に富んでいる」
「弱い」
などの判断をしています。必要な時にはいつでもノートさえあれば、本の内容を復元できるように工夫されていました。
読書の技法
読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門 [ 佐藤優 ]
花村さんは、「読書記録(抜き書き・要約)とそれへの自分のコメント、 さらにノートを読み返しての感想、というように反復使用に耐えうるノートの取り方の見本だ」と分析しています。そのうえで、花村さんは、レーニンの綿密な ノート術からは、要約の手法を学ぶべきだと指摘しています。
「なるべく原文に忠実な要約をつくるために、彼のノートは読んだ本の本文からの引用が多い。レーニン自身の書いた地の文から、引用文が区別され浮き出されるようになっていて、なるたけ引用文自身に語らせるよう工夫していることがわかる」
「筆者の思想を十分正確に把握したうえで、自分の考えをつきあわせていくという対話的進行の形式をこのノートはもっている」
花村さんはこう書いています。読んだ本と対話して、自分の思想を深めるということでしょう。
レーニンのノートは日本語版でも読めます。佐藤さんは、ヘーゲルの「歴史哲学講義」、花村さんは、やはりヘーゲルの「論理学」に関するレーニンのノートを紹介していますが、レーニンのノートは、750ページある「歴史哲学講義」を10ページで、単行本4冊に及ぶ「論理学」を150ページで、それぞれ要約し ています。
ヘーゲル研究者には、まず、「論理学」に関するレーニンのノートを学んでから、ヘーゲルの文献を勉強する人もいるといいます。「すばらしい要約・転写能力だ」と花村さんは書いています。
佐藤さんも「レーニンの中で生涯、本から得た知識が生きたはずである。レーニンが成功した秘訣はこうしたノートのとり方にあり、ビジネスパーソンが学ぶべき点は多い」と指摘しています。佐藤さんも抜き書きとコメントで、自らのノートを作っています。
知的トレーニングの技術〔完全独習版〕 (ちくま学芸文庫)
知的トレーニングの技術完全独習版 (ちくま学芸文庫) [ 花村太郎 ]
まとめ
私も、ノートや手帳に、本や新聞記事の重要箇所や面白いと思った部分を抜き書きして、気づいたことを書き加えていますが、レーニンのノートを読むと、活用の仕方にまだまだ多くの問題があることがわかります。
一つは、要約の力を高めることです。著者の考えを忠実に圧縮して再現することです。この力を高めるには、本をもっと読まなくてはなりません。ノートを再三、読み返して、その都度、コメントを加えて、自分の思想を深めていくことも大切です。まだまだ、読み返しが足りません。
「ノートに書くということは、この世にたった一冊しかない自分用の書物をつくるということだ」。
花村さんのこの言葉を胸に、私も、ノート作りの技術を高めていきたいと思います。
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