この書庫は、円形の内壁に本を並べ、螺旋(らせん)階段を登り降りしながら、本を手にするものです。特集記事の写真か らすると、この書庫は2階部分にまで及んでいるのでしょうか。本をいつでも見ることができ、いつでも手にすることができます。「本との対話」の大切さを学 ぶことができます。
「ここに1万冊ぐらいあります。背表紙が全部、見えて、脚立なしで本が取れるように、円形の内壁を螺旋階段で上がっていく形になりました」
松原さんは記事で、こう自らの書庫を語っています。壁一面に本がぎっしり並べられた書庫はよく見ますが、円形の書庫は初めてです。本が多くなると、本棚の 奥に隠れて埋没してしまう本も出てきてしまいますが、円形ならば、そんな心配もありません。螺旋階段で、すぐに手にすることができるのもいい所です。
松原さんは、一つのコーナーに、テーマの仕事に関する本を並べ、その仕事が終わると、中身を入れ替えていくのだそうです。半分以上は入れ替わっているといい、「本の並びは連想で緩やかにつながっている。ここは、僕の頭の中なんです」と語っています。
専門の本をそろえる。それらの本を精読し、そのポイントを把握したうえで、論文などを書く。執筆の手法がよくわかります。松原さんがこなしてきた仕事の量、質が優れたものであることが容易に想像できます。
「書庫を建てる」(堀部泰嗣氏との共著)など松原さんの著書をぜひ読んでみようと思います。
私の書庫に目を転じると、実家に置いてあるものと合わせ、本は多いものの、1段の書棚の奥にある本はよく見ることができません。松原さんのような書庫はス ペースの関係から、そう簡単に作ることはできませんが、背表紙を見ながら、いつでも本との「対話」ができる書庫を作るよう工夫してみたいと思います。
背表紙を見れば、本の内容を思い出すことができます。そこから、思考が発展します。こんな書庫があったら、いいなあと思います。
今回の特集では、ライフネット生命保険会長兼CEOの出口治明さんが、著者が一番力を入れている最初の10ページを真剣に読むことや、古今東西の古典を読むことを勧めています。こんな読み方の提言を私も改めて実践してみるつもりです。