今年も読書週間(10月27日-11月9日)に入り、新聞や雑誌が特集を組んでいます。本の読み手が独自に語る本の収納法や読書論はどれも読みごたえが あり、楽しく読むことができます。今回は、読売新聞の特集(10月27日)にあった、東大教授の松原隆一郎さん(社会経済学と経済思想史が専門)の書庫に まず驚きました。

この書庫は、円形の内壁に本を並べ、螺旋(らせん)階段を登り降りしながら、本を手にするものです。特集記事の写真か らすると、この書庫は2階部分にまで及んでいるのでしょうか。本をいつでも見ることができ、いつでも手にすることができます。「本との対話」の大切さを学 ぶことができます。

「ここに1万冊ぐらいあります。背表紙が全部、見えて、脚立なしで本が取れるように、円形の内壁を螺旋階段で上がっていく形になりました」

松原さんは記事で、こう自らの書庫を語っています。壁一面に本がぎっしり並べられた書庫はよく見ますが、円形の書庫は初めてです。本が多くなると、本棚の 奥に隠れて埋没してしまう本も出てきてしまいますが、円形ならば、そんな心配もありません。螺旋階段で、すぐに手にすることができるのもいい所です。

松原さんは、一つのコーナーに、テーマの仕事に関する本を並べ、その仕事が終わると、中身を入れ替えていくのだそうです。半分以上は入れ替わっているといい、「本の並びは連想で緩やかにつながっている。ここは、僕の頭の中なんです」と語っています。

専門の本をそろえる。それらの本を精読し、そのポイントを把握したうえで、論文などを書く。執筆の手法がよくわかります。松原さんがこなしてきた仕事の量、質が優れたものであることが容易に想像できます。

「書庫を建てる」(堀部泰嗣氏との共著)など松原さんの著書をぜひ読んでみようと思います。

私の書庫に目を転じると、実家に置いてあるものと合わせ、本は多いものの、1段の書棚の奥にある本はよく見ることができません。松原さんのような書庫はス ペースの関係から、そう簡単に作ることはできませんが、背表紙を見ながら、いつでも本との「対話」ができる書庫を作るよう工夫してみたいと思います。

背表紙を見れば、本の内容を思い出すことができます。そこから、思考が発展します。こんな書庫があったら、いいなあと思います。

今回の特集では、ライフネット生命保険会長兼CEOの出口治明さんが、著者が一番力を入れている最初の10ページを真剣に読むことや、古今東西の古典を読むことを勧めています。こんな読み方の提言を私も改めて実践してみるつもりです。