啓蒙思想家で、慶應義塾大学を創設した福沢諭吉(1835年-1901年)は、新しい西洋文化の概念を日本語の訳語に置き換えたことで知られています。「演説」や「西洋」、「自由」などは今の社会に定着しています。その功績は、時代を画した偉業と言えるでしょう。
「『演説』というのは、英語で『スピーチ(speech)』といって、大勢の人を集めて説を述べ、席上にて自分の思うところを人に伝える方法である。わが国では、むかしからそのような方法があることを聞かない。寺院の説法が、まあ、これに近いだろうか」
明治時代、大ベストセラーになった「学問のすすめ」で、諭吉は、「演説」を、こう定義しています。演説という日本語は、古くからありましたが、諭吉がスピーチの訳語として、再度、取り上げました。その後、諭吉が演説館を造ったり、スピーチの重要性を再三、訴えたため、諭吉が造語した言葉のように定着しました。
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やはり、ベストセラーになった諭吉の著書「西洋事情」の影響で、欧米社会を表現する言葉として、「西洋」が使われるようになりました。それまでは、「遠西」が欧米社会を表現する言葉でした。
「自由」についても、その「西洋事情」で、諭吉は、「心身の働きをたくましくして、人々がたがいに相妨げず」と規定しています。「家庭」も、諭吉が欧米社会から持ち込んだ言葉とされています。
「福沢たち啓蒙家の残した大変大きな功績の一つに、西洋の考え方や言葉を日本の言葉に直したことがあります。私たちが普通に使っている『幸福』や『社会』や『権利』という言葉も元は訳語ですが、今や日常生活で当たり前のように認識の道具にしています」
「学問のすすめ」の解説で、斎藤孝・明治大学教授は、こう書いています。
言葉の変遷を感じるとともに、言葉に残る財産という、偉人の功績に感謝したくなります。
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