ペンに、アップル(リンゴ)とパイナップルを刺すというピコ太郎(シンガーソングライター)の動画「PPAP(Pen―Pineapple―Apple―Pen、ペンパナッポーアッポーペン)」。ユーチューブでの再生回数が1億回を突破するなどピコ太郎人気が世界で大爆発中です。世界をうならせたピコ太郎さん=写真はピコ太郎公式ホームページから=、そして、PPAPの人気の理由はどこにあるのでしょうか。面白さを分析すると、7つの教訓を得ることができます。
◇「世界語」を発信
I have a pen.
この英語は、世界の多くの人々が知っている一文です。この簡単な言葉を選んだのが人気を呼んだ最大の理由でしょう。apple、pineappleも基本単語です。
「でも、まさかここまで浸透するとは。海外の人がカバーしてくれた動画を見て思ったのは、英語が片言だということ。ブロークンイングリッシュが、世界の共通語なんでしょうね」。ピコ太郎さんは、読売新聞とのインタビュー(12月8日朝刊)で、こう語っています。
ブロークンイングリッシュ--。外国語習得では、文法を完璧に把握するに越したことはありませんが、言葉は、多くの知らない人々とコミュニケーションを図るための道具です。PPAPは、コミュニケーション能力を磨くことの大切さを教えてくれます。PPAPの面白さは、世界の言語という壁をすっかり越えてしまいました。
私も海外駐在で、英語を使う機会がありましたが、コミュニケーションを最優先し、英語を話す知人、友人らに多く出会いました。まさに、ブロークンイングリッシュです。単語を並べるだけの会話もありましたが、コミュニケーションを取ろうとする意識があると、十分に通じました。概して、日本人は、英会話で完璧さを求めがちです。文法が間違ったら恥ずかしい、という意識は多くの人が持っているのではなでしょうか。今後の教育では、もう少し、会話するという姿勢を重視したものにするべきでしょう。話す勇気を持つための教育が求められるということです。
◇発想の面白さ
ペンに、アップルとパイナップルを刺すという発想の面白さがあります。誰もが知っている基本単語ですが、この組み合わせは、考えつきそうで、簡単には思いつくものではありません。
新しいアイディアは組み合わせだということは良く言われることです。似通ったもの、あるいは、全く異なるものを、いろいろ組み合わせて考えることの大切さを教えてくれます。新しいアイディアはどう生まれて来るのかがよくわかります。
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◇基本パターン
誰もが楽しめる基本パターンを提供したことが第三の理由でしょう。1分足らずという短さの動画には、ギュッと面白さが凝縮されています。
I have a pen.
I have an apple.
Ah! apple pen.
I have a pen.
I have a pineapple.
Ah! pineapple pen.
Apple pen.
Pineapple pen.
Ah! pen pineapple apple pen!
誰もが応用できる基本パターン、パソコンで言えば、テンプレート(テーマ)を提供してくれています。世界各国のピコ太郎ファンが、PPAPをもとに、自分のためのPPAPを作り上げることができるようになっています。トランプ次期米大統領の孫の女の子がPPAPを歌って踊る動画も公開されましたが、この女の子もピコ太郎のPPAPを自分なりに応用して楽しんでいます。インドや台湾など世界で、ピコ太郎ファンが自分たちだけのPPAPを作っているのは、まさに、この基本パターンがあるからです。
基本を押さえれば、簡単に応用できるようになっています。外国語で言えば、基本構文もこれに相当するでしょう。ピコ太郎さんも、この基本パターンを応用して、多くのテレビコマーシャルに出演しています。今後もさらに、さまざまなPPAPが生まれて来るでしょう。ピコ太郎人気は長く続きそうです。
◇簡単さ
軽快な音楽、踊りはすぐにでも反復可能で、いつまでも記憶に残ります。誰でも簡単に口ずさみ、簡単に踊ることができます。そして、すぐにでも応用できます。ちょっとコミカルなピコ太郎さんの風貌も魅力的です。基本パターンと同様、簡単さ、シンプルさが大切なことを教えてくれます。
◇早口言葉
早口言葉の面白さを再現したこともピコ太郎人気を支えています。ペン、パイナップル、アッポーペン。この早口言葉も、単語をいろいろ変えれば、それらの単語ならではの面白さを味わうことができます。ピコ太郎さんのビン、カナブン、デモ、イン、ビンからも同じ響きを感じ取ることができます。
言葉を大切にすること、そして、言葉は深い意味を持っていることを教えてくれます。世界各国で、その国の言葉を駆使した早口言葉のPPAPが今後も、どんどん生まれて来るでしょう。
◇笑顔
ピコ太郎さんの笑顔も人気の理由と言えます。一度、映像を見たら、忘れがたい面白さです。
「今、世界中で動画が再生されているということは、みんな私を見て1分ぐらいは笑ってくれているということ。その1分だけは、世界平和に貢献できていると思っています」。ピコ太郎さんは同じ読売新聞とのインタビューでこう語っています。
どんな時も笑顔を忘れないということを教えてくれます。笑顔の大切さです。人生は楽しいことばかりではありませんが、笑顔を心がけたいものです。小さな笑顔が、大きな世界平和につながることを教えてくれます。ピコ太郎さんの言葉は哲学的でさえあります。
「幸福だから笑うわけではない。むしろ、笑うから幸福なのだと言いたい」(「幸福論」石川湧訳)。フランスの哲学者アラン(本名エミール・オーギュスト・シャルティエ)は、笑いの大切さを、こう書いています。この言葉は、幸福は自分から追い求めて得るものである、ということを説いたものです。自分から、笑って、笑って、幸福をつかみ取りたいものです。
◇運
PPAPを動画サイト「Youtube」にアップしたのは2016年8月25日ですが、一気に、人気に火が着いたのは、カナダ出身の歌手ジャスティン・ビーバーさんが自らのツイッターに「お気に入り動画」と書き込んだことからです。その面白さに、若者の間で、じわじわと人気が上がっていましたが、決定打となったのは、世界に莫大なファンを持つビーバーさんのツイートでした。
ピコ太郎さんも認めているように、ビーバーさんが運をもたらしました。ただ、運だけではありません。ピコ太郎さんが、面白さは何かを磨く努力をしてきたからこそ、人気が爆発したと言えます。努力をし続けることの大切さがわかります。
「天才とは忍耐なり」
こう述べたフランスの博物・植物学者ビュフォンは、毎日、学問に多くの時間を費やし、成果を上げました。自分の目標、理想に向けて、勤勉に励む、努力するということでしょう。
「天才とは何ぞや、勤勉是也(きんべんこれなり)」。ゲーテの天才論の中の一文を読み、日本の林学を確立した本多静六博士も「ゲーテも俺と同じこうとを言うておるわい」と書いています。
本多静六博士も、毎日、「書く行(ぎょう、行為)」として、価値のある文書を毎日、原稿用紙1枚(14行32字詰め)以上、書き続けました。この結果、一生涯で書いた本は376冊に達しました。その内訳は、教養書53冊、林学書58冊、庭園関係126冊、旅行記104冊などです。膨大な量で、驚かされるばかりです。
運は、努力によってもたらされることがわかります。小さな努力を積み重ねたいものです。
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