韓国に駐留する在韓米軍をめぐって、戦力の縮小・削減を検討する議論が浮上してきました。米国のトランプ大統領が負担削減の立場から、戦力の縮小・削減を検討しているのに加え、2018年4月末の韓国と北朝鮮による南北首脳会議で、「朝鮮半島の非核化」や平和協定締結を目指すという目標が示されたことで見直し論議が高まってきました。まずは、6月初旬までに開催される米朝首脳会談の行方が注目されます。
◇トランプ大統領の立場
トランプ大統領は、大統領選挙期間中から、「韓国は十分に財政負担をしていない」として、在韓米軍の戦力規模の見直しを訴えてきました。
在韓米軍の駐留経費に関する協定は2018年末で切れますが、トランプ大統領は今年3月から始まった韓国側との交渉で、韓国側負担を倍増し、全額を支払うよう止めています。現在、韓国側負担は1年間で8億3000万ドルですから、17億ドル近くを要求する形になっています。
韓国側の費用負担が十分でなければ、在韓米軍の戦力の縮小・削減もやむを得ないという立場です。
◇南北首脳会談で、論議に拍車
これに拍車をかけたのが、4月末、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領との首脳会談で、両国の間で現在の休戦協定を平和協定に転換するという目標が示されたことです。
平和協定を締結したら、在韓米軍をどうするのか――。
在韓米軍は、韓国と米国が1953年に締結した米韓相互防衛条約に基づいて駐留しています。韓国、北朝鮮間の平和協定とは関係ないという見方もありますが、平和協定と言う以上、米韓米軍の見直しをせざるを得ないという意見も出てきました。
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◇韓国の外交ブレーンが在韓米軍に疑問
早速、韓国の文在寅大統領の統一外交安保特別補佐の文正仁(ムン・ジョンイン)氏が5月2日、米国の外交誌「フォーリン・アフェアーズ」に、「平和協定が締結されれば、在韓米軍の駐留は正当化できなくなる」との記事を投稿しました。
文在寅大統領は、この投稿について、文政権の立場とは異なることを強調しましたが。外交ブレーンの見解だけに今後、波紋が広がりそうです。外交ブレーンと同じ見解を持つ国民もいるとみられ、今後、論議は韓国内で活発化しそうです。
◇米紙報道
この投稿に続いて、米紙ニューヨーク・タイムズが5月3日、トランプ大統領が、在韓米軍の戦力規模の削減を検討するよう国防総省に指示した、と報じました。
ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)は4日、韓国の鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安全保障室長と会談、在韓米軍の規模を維持することを確認し、ニューヨーク・タイムズ紙の報道を否定しましたが、同紙の報道は、米政権内が微妙な問題で揺れ動いていることを物語る結果にもなっています。
◇米朝首脳会談
6月上旬までに行われるトランプ大統領と、金正恩委員長による米朝首脳会談の行方がまず、注目されます。
金正恩委員長は先の南北首脳会談で、韓国の金在寅大統領に、朝鮮半島の非核化を目指すうえで、在韓米軍の撤退や規模縮小・削減を求めない方針を明らかにしたとされていますが、北朝鮮が核兵器を放棄していくことになると、在韓米軍の在り方が再び、論議されることは必至です。
北朝鮮の安全が核兵器を放棄しても保障されるのか、大きな国際政治問題になってくるからです。
■在韓米軍
1950年に始まった朝鮮戦争では1953年、休戦協定が締結されましたが、同じ年、米国と韓国の間で調印された米韓相互防衛条約に基づいて駐留している部隊です。正式には、「在韓国連軍」ですが、他国は連絡要員のみで、米軍部隊2万8500人が駐留しています。司令部はソウル・竜山基地で、ビンセント・ブルックス陸軍大将が司令官を務めています。
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