イギリスの作家、P.G.ハマトンの著書「知的生活」(講談社学術文庫、渡部昇一、下谷和幸訳)を読むと、ハマトンが抜き書き帳を作り、丹念に抜き書きをしていたことがわかります。本の中にちりばめられた豊富な例がこの抜き書きに拠ったものであろうことが想像できます。抜き書きの大切さと言えるでしょう。
「私が抜き書き帳に抜き書きをしておいたのは、私自身のためというよりはあなたのためなのです」。
「知的生活」の第十章「知性の衛生学」で、「処女作を執筆中の若い作家へ」と題して、ハマトンはこう書いています。
実際、どんな抜き書き帳で、どんなふうに抜き書きをしていたかは書いていませんが、ハマトンが抜き書きをしていたという事実を知ると、いろいろな人のスタイルを豊富に引用してまとめた「知的生活」の魅力が理解できます。
ドイツの哲学者カントが健康に留意していたことはよく知られていますが、この健康に関して、ハマトンは、多くの人の生活スタイルも紹介しています。
イギリスのロマン派詩人ウィリアム・ワーズワースは戸外を歩きながら詩を作りました。これについて、ハマトンは、「彼は、机にかじりついてばかりいる生活がもたらす害から身を守ったのです」と書いています。
また、ハマトンは、
フランスの女性作家ジョルジュ・サンドが昼間の数時間、田舎を散歩していたこと
イギリスの詩人・作家のウォルター・スコットが屋外スポーツを心ゆくまで楽しんだこと
フランスの作家ウジェーヌ・シューが毎朝10時まで著作し、残りの時間は乗馬か屋外スポーツ、庭仕事をして過ごしたこと
を、この本の中で書いています。
知的生活の上で、健康が必要だということを、これらの豊富な例で実証しています。
抜き書きの力と言えるでしょう。本を読んだら、重要な個所、面白いと思った部分を抜き書きしておく。時間を見つけて、繰り返し読む。そんな作業が大切であることがわかります。
レーニンや本多静六博士、作家の佐藤優さん、本田直之さんらが抜き書きをしていることをこのブログで書いてきましたが、地道に、抜き書きを続ける大切さが改めてわかります。
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