ヘルマン・ヘッセ 繰り返し読む本を蔵書として持つ 心の財産にする 【偉人のスタイル】

 長編小説「車輪の下」などで知られるドイツの作家ヘルマン・ヘッセ(1877年-1962年)は、繰り返し読む本を蔵書として持つことを勧めています。気に入った本は2度、3度、4度、と読み込んでいく。読んで楽しみ、心の財産にもう一つの新しい、大切な財宝を付け加えることの大切さを説いています。

 「私は数万冊の本を読みました。そのうちの数冊は何度も読みました」

 「三人か四人の一流の作家の作品を完全に、そしてくりかえし読んだ者は、次から次へと好奇心に駆られてあらゆる時代と国々の文学作品の抜粋と断片を多量に飲み込んだ読者よりも豊かなのであり、はるかに多くの事を学んだのである」

 「少量の本を徹底的に知っているので、その本を手に取るだけでそれらを読んですごした無数の時間を思い起こすことができることは、千冊もの本の題名と詩人の名の漠然とした記憶でいっぱいになった頭よりずっと高尚で、自分の心を満足させてくれるものである」(いずれも「ヘッセの読書術」から)

 ヘッセは読書論の真髄を、こう書いています。流行に左右されることなく、自分の気に入った本や、時代を経て読まれてきた名著は、繰り返して読んで、親しくつきあう。そこから、新しい知の世界が開けてくることを強調しています。

 ヘッセは、

 ゴットフリート・ケラーの「緑のハインリヒ」を四度、
 メーリケの「宝物」を七度、
 ユスティーヌス・ケルナーの「旅の陰影」を三度、
 アイヒェンドルフの「愉快なのらくら者の生活から」を七度、

 読んだことをあげたうえで、「これらの本のどれでも本棚に並んでいるのを見るたびに、いつかまた読むであろう日を楽しみにしている」と書いています。

 蔵書の大切さでしょう。ヘッセの心をとらえた、これらの本をぜひ読んでみたいものです。

 ヘッセは、古代ギリシャのホメーロスの叙事詩や、中世ドイツの民族的英雄叙事詩「ニーベルンゲンの歌」、ゴットフリート・フォン・シュトラースブルクの「トリスタンとイゾルデ」などを読むよう勧めています。

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また、偉大な作家として、シェークスピアとゲーテ、シラーらを挙げ、必ず読むよう説いています。

 「ヘッセの読書術」の中で、もう一つ面白いと思ったのは、ヘッセが、自分の知人が所有していた古い本を持つように勧めていることです。祖父や祖母、父、母ら親しい家族らが読んだ本には、気に入った個所に線が引かれたり、印の黄ばんだ栞があったり、メモがあったり、本が固有の歴史を持っています。これらの本を所有して読むことで、本の伝統と過去の文化の一端が伝わってくるとしています。

 知人が所有していた古い本というと、私はインド駐在時代を思い出します。事務所兼住宅には歴代の駐在員が残していったさまざまな本がありました。自分で書店に行っても決して買わないだろうと思う本もたくさんありました。

 全部ではありませんでしたが、一度、手に取ると、その面白さに引き込まれて熟読する本もありました。思いもよらない視点に、読書の深さを感じたものです。

 自分の気に入った本を蔵書にして、子供たちに伝える。貴重な心の財産になるはずです。

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