ロフテッド軌道とは? 北朝鮮がロフテッド軌道で弾道ミサイル発射を繰り返す、その狙いは? 

 北朝鮮が、ロフテッド軌道で弾道ミサイルの発射を繰り返しています。ロフテッド軌道とはどんな発射技術なのでしょうか。また、北朝鮮の狙いはどこにあるのでしょうか。核開発も懸念される北朝鮮情勢を探ってみました(トップの写真は、北朝鮮のICBM発射を報じた読売新聞の記事=2017年7月4日、5日付)。

 ◇ロフテッド軌道とは

 通常よりも高い角度(45度以上)で、弾道ミサイルを打ち上げる技術で、弾道ミサイルの飛行する軌道を指します。最大高角発射システムとも言われています。通常の角度で発射した場合は、できるだけ遠くの目標地点に到達することを狙っていますが、ロフテッド軌道による弾道ミサイルは高い角度に打ち上げるため、飛距離は通常の角度で発射した場合に比べると、落ちます。

 しかし、弾道ミサイルを高度に発射する分、落下速度が増し、通常軌道に比べて、日本で配備されている地対空誘導弾「PAC3」などでの迎撃が難しくなります。

 ◇ロフテッド軌道による北朝鮮の弾道ミサイル発射は何回?

 新聞報道によると、北朝鮮は2016年6月22日以来、これまでに5回、ロフテッド軌道で弾道ミサイルを発射したと見られています。以下の通りです。

 2016年6月22日 中距離  ムスダン  高度1400キロ
 2017年2月12日 中距離  北極星2型 高度 550キロ(500キロとの報道も)
      5月14日 中長距離 火星12  高度2111.5キロ 
      5月21日 中長距離 北極星2型 高度 560キロ 
      7月 4日 大陸間  火星14  高度2500キロ 
 
 飛行距離はいずれも1000キロに達していませんが、通常軌道で発射した場合、飛行距離は、実際の飛行距離の数倍に及ぶと見られています。

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 ◇北朝鮮の狙いは

 北朝鮮の最終目標は、核弾頭を搭載して米本土に到達できる大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発です。7月4日の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の場合、実際の事項距離は933キロですが、通常軌道で発射した場合は、8000キロ~10000キロに及ぶと推定されています。米首都ワシントンなど東海岸には届かないものの、ハワイやアラスカ、さらには米西海岸に到達する射程となり、最終目標に一歩ずつ近づいています。

 通常角度でICBMを発射すると、日本上空を通過することになります。このため、北朝鮮は7月4日、ロフテッド軌道で弾道ミサイルを発射することで、日本上空通過を避け、同時に、ICBMを米国に見せつけたとされています。

 ◇北朝鮮の技術的課題

 弾道ミサイルが大気圏外に出て、再び大気圏に突入する際、6000度~7000度の高熱が発生し、弾頭表面の温度が上昇します。このため、弾頭を高温から守る技術が必要になりますが、北朝鮮はまだ、弾道ミサイルの再突入技術を得るまでには至っていないと見られています。

 また、射程1万キロ以上のICBMの場合、弾頭を200キロ前後に小型化しないといけませんが、こちらの技術も、北朝鮮はまだ確立していないとみられています。ただ、北朝鮮は核実験をこれまでに5回実施しており、小型化を着実に進めています。

 ◇米国にとってのレッドライン

 米国のトランプ政権は、北朝鮮への軍事行動開始の基準として、2つの「レッドライン」を設定しています。

 ・ICBM発射
 ・6回目の核実験

 です。

 7月4日のICBMは、まだ米本土はとらえていないものの、レッドラインの一つを越えたものとも見られます。核実験の兆候も度々、報道されており、6回目の核実験が行われれば、米国、北朝鮮間の緊張は一気に高まりそうです。

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 ◇

 北朝鮮のミサイル技術などについても、記事を書いています。

 北朝鮮がミサイル発射を繰り返しています。2016年は24回、今年2017年は8回というハイペースです。北朝鮮のミサイル技術はどこまで進展しているのでしょうか。ミサイルの種類、射程、さらには、日本への脅威はどうなるかなども含めて調べてみました。

 ◇新型弾道ミサイル「火星12」

 北朝鮮は5月21日にも、弾道ミサイルを発射し、2017年のミサイル発射は9回となりましたが、このなかでも注目されているのは、5月14日に発射した新型弾道ミサイル「火星12」です。中距離弾道ミサイル「ムスダン」の性能を向上させ、米本土も狙うことができる大陸間弾道ミサイル(ICBM)に大きく近づいたと見られているからです。

 また、最大2111.5キロメートルの高度まで打ち上げられ、788キロメートル飛びました。高い高度まで到達したのは、「ロフティッド軌道」という新しい技術が用いられたためです。

 ムスダンは射程約2500キロメートル~4000キロメートルですが、火星12を通常の軌道で発射すると、射程は約4500キロメートル~約5000キロメートルに達する、と韓国国防省は分析しています。一部のムスダンは、米空軍アンダーセン基地がある米グアムに到達できる能力がありましたが、火星12が完成すれば、グアムが完全に、北朝鮮のミサイルの射程内に入ることになります。

 また、「ロフティッド軌道」で打ち上げたことで、火星12は日本海にマッハ15(音速の15倍)の速度で着弾したと見られています。ムスダンの下降速度はマッハ10~15、ICBMの下降速度は24マッハですから、火星12は一層、ICBMの下降速度に近づきました。下降速度が増すほどに、迎撃が難しくなってきます。

 在韓米軍の最新鋭ミサイル防御システム「最終段階高高度地域防衛(THAAD)はマッハ14まで迎撃可能ですが、日本に配備されている地対空誘導弾「PAC3」はマッハ7程度までしか対応できません。

 これだけでも、日本への脅威は大幅に増したことがわかります・・・続きは、こちらです。