英国が6月23日の国民投票で欧州連合(EU)からの離脱を決めたのに伴い、「Britain(英国)」と、「Exit(離脱)」を組み合わせた造語の「Brexit(ブレグジット)」や、「Britain(英国)」と、「Regret(後悔)」を組み合わせた造語の「Bregret(ブレグレット)」が生まれましたが、「Brexit(ブレグジット)」を推進する人々を表現する「Brexitters(ブレグジッター)」も定着してきました。
Brexiteerの一人、ボリス・ジョンソン前ロンドン市長は先週、最有力候補と見られながらも、キャメロン首相の後任レースには出馬しないことを表明しました。また、もう一人のBrexiteerである英国独立党(UKIP)のナイジェル・ファラージ党首も4日、「英国のEU離脱で、私の政治的目的は達成された」として、党首を辞任しました。
この中で、欧州統合派が大半を占めるEUでは、二人を中心に、Brexiteersに対する批判が強まっています。
その先頭に立つのが、Brexiteersと度々、対立してきたユンカー欧州委員長です。仏独主導の下、欧州統合を長年、けん引してきた政治家(ルクセンブルク首相などを歴任)ですが、ユンカー氏は4日、仏ストラスブルクでの欧州議会で、「英国のEUからの離脱が決まったが、(EUとの離脱交渉という)困難が今後、予想される中で、ジョンソン氏と、ファラージ氏は逃げ出した。愛国者は決して、途中で逃げ出しはしない」と強く2人を批判しました。
EU理事会議長国・オランダのルッテ首相も、「英国のEU離脱は、EU諸国、特に、英国にとって、先行きは極めて、不透明なものになった。英国はすでに、政治、経済、金融上、破たんした。この混乱を脱するには数年を要するだろう」と語りました。また、ベルギーのフェルホフスタット元首相も、「我々は何も変えない。現存するEUの政策を着々と実行に移していく」とEU政策には変更がないことを強調しました。Brexiteersに対する批判は強まる一方です。
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先のブログで書いた新語は以下の通りです。
Brexit(ブレグジット)
Britain(英国)と、Exit(離脱)を組み合わせた造語です。まさに、英国のEU離脱を表現した新語で、英国は国民投票の結果、離脱51.9%。残留48.1%で、EUからの離脱を決定しました。1993年の欧州連合(EU)発足以来、中・東欧諸国などへの拡大を続けてきたEUにとって、初めての離脱で、EU加盟国や国際社会に大きな衝撃を与えました。
Bregret(ブレグレット)
Britain(英国)と、Regret(後悔)を組み合わせた造語です。英国では6月23日の国民投票まで、離脱、残留派が拮抗していました。国民投票後もEU残留を望む人々や、EU離脱に一票を投じたものの、それを後悔する人々も多く、離脱決定を後悔する動きを表現しています。国民投票のやり直しを求める署名運動も高まっています。スコットランド、ロンドン市にはEU残留を望む人々も多く、しばらく、英国政局は分裂の危機を含みながら、混乱が続きそうです。
Nexit(ネクジット)、Frexit(フレクジット)
Netherlands(オランダ)とExit(離脱)を組み合わせた造語と、France(フランス)とExit(離脱)を組み合わせた造語で、オランダ、フランスのEU離脱の動きを表現した造語です。Brexitと同様の発想で生まれたものです。2017年3月に、オランダ議会選挙、同5月には、フランス大統領選挙が行われます。オランダでは、極右・自由党、フランスでは、極右・国民戦線がそれっぞれ伸張しており、選挙で勝った場合は、英国と同じような国民投票を実施することを訴えています。英BBCによると、フランスの国民戦線のルペン党首は、「英国のEU離脱は、(社会主義諸国陣営破たんの)ベルリンの壁崩壊(1989年)以来、最も、重要な出来事になった」と語っています。
Czexit(チェクジット=チェコのEU離脱)、Grexit(グレジット=ギリシャのEU離脱)の新語もできています。また、イタリア、スウェーデンでも反移民を訴える極右勢力が伸びています。
Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2016年 7/5 号 [BREXIT SHOCK 英国、EU離脱の衝撃] 新品価格 |