イタリア総選挙の日程が3月4日に決まりました。世論調査による事前予想では、ポピュリズム(大衆迎合主義)政党の「五つ星運動」が第1党になる見通しです。ただ、与党の民主党(中道左派)も含めて過半数を獲得する政党はなさそうで、「ハングパーラメント(宙ぶらりん議会)」になると見られています。政局の不安定化が当分、続く恐れがあります。
また、イタリア内政だけでなく、国際政治にも影響を与えそうです。
◇今回の総選挙の経緯
今回の総選挙は、マッタレッラ大統領が2017年12月末、議会の解散を宣言、これを受けて、ジェンティローニ首相が閣議を開き、選挙日程を決定したものです。
◇選挙システム
イタリアでは1993年以来、3回、選挙法が改正されてきましたが、今回の総選挙は、2017年11月に改正された選挙法に基づいて行われます。
これまでは、上院(定数320)、下院(同630)とも、すべての議席が比例代表制で選ばれてきましたが、今回の総選挙では、上、下院どちらとも、定数の36%を小選挙区で、残りの64%を比例代表で選出することになりました。並立制です。
また、これまでは、得票第1位の政党に、過半数の議席を割り当る「プレミアム制」を適用していましたが、今回はこれを廃止しました。
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◇五つ星運動が第1党に
ポピュリズム政党「五つ星運動」、与党で中道左派の民主党、ベルルスコーニ元首相が率いる中道右派の「フォルツァ・イタリア」、移民排斥を訴える中道右派の「北部同盟」など主要政党の支持率は、世論調査による予想で、以下のようになっています。
反体制
五つ星運動 29%
中道左派陣営
民主党 25%
中道右派陣営
フォルツァ・イタリア 15%
北部同盟 13%
◇ハングパーラメント
こう見ると、過半数を獲得できる政党がないことがわかります。
第1党となる見通しの五つ星運動は、連立をしない方針で、政策ごとに各党と閣外協力する姿勢を示しています。五つ星運動が政権運営したとしても脆弱なものになります。
中道左派の民主党は、中道右派政党と大連立を模索すると見られますが、異なる政策も多く、大連立が成立するかは不透明です。フォルツァ・イタリア、北部同盟の中道右派の2政党と大連立して、ようやく、過半数をやや上回る形になります。
中道右派陣営では、フォルツァ・イタリア、北部 同盟の中道右派政党の連立でも、過半数に届きません。
選挙後の連立協議は難航、長期化しそうです。
◇欧州連合(EU)との対立激化も
内政の不安定化が懸念されますが、EUとの対立も激化しそうです。ポピュリズム(大衆迎合主義)と言えば、五つ星運動ですが、民主党、フォルツァ・イタリア、北部同盟とも、五つ星運動が躍進する中で、ポピュリズムとも言える「ばらまき政策」を前面に掲げているためです。EUは緊縮財政をイタリアに求めています。
各党の政策を見てみましょう。
・五つ星運動
生活レベルの低下は、欧州連合(EU)から科された緊縮財政政策によるとして、EUとの再交渉を要求しています。その要求が満たされない場合は、ユーロ圏からの離脱を問う国民投票を実施するとしています。
また、景気刺激のための歳出増、貧困層への補助金支給、経営に苦しむ銀行を救済する特別銀行の設立などを政策として掲げています。
・民主党
EUと交渉し、緊縮財政を押し進めましたが、五つ星運動の躍進に危機感を強め、一転、緊縮財政の見直しを打ち出しています。また、家庭や企業への減税も計画しており、その規模は、500億ユーロ(約6兆7500億円)に及びます。
・フォルツァ・イタリア
国内で、「新リラ」を導入、EU域内では、ユーロを使用する新通貨制度を提案しています。また、現行23~43%の所得税率を15%か23%にする大型減税を訴えています。
・北部同盟
フォルツァ・イタリアと同様の新通貨制度のほか、企業、個人に対する税率を一律15%にすることを提案しています。
◇まとめ
こうして見てくると、イタリアの総選挙が、内政だけでなく、欧州政治の行方を占う国際問題になることもわかります。
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