禅は、深くてやさしい「生きる知恵」の宝庫――。枡野俊明さんの著書「禅、シンプル生活のすすめ」を読むと、こんな禅の真髄がわかります。「禅とはなにか」(鎌田茂雄著、講談社学術文庫」を読んで、禅をさらに学びました。
「座禅 読書」「座禅 読書」。こんな日々を繰り返した哲学者・西田幾多郎博士の研究生活が本の中で紹介されています。座禅で心を無にし、読書で知識を得て、思考を深める。西田博士がこんな生活スタイルで、「西田哲学」として称賛される独自の哲学を築いたことがわかります。
「午前坐禅、午後坐禅、夜坐禅、十二時半頃まで」
「午前六時晨起(しんき)、打坐・冷拭・運動。午後主幹会議あり。夜カントを読む」
「午前五時晨起、打坐・冷拭・運動。午後ファウスト会を始む。夜カントを読む」
西田博士の「寸心日記」には、こんな表記が随所にあります。鎌田さんは、「私はこの『寸心日記』をみてどんなに奮起したことか。西田博士は打坐と読書の繰り返えしであった」と書いています。打坐は、只管(しんかん)打坐のことで、ただひたすら座禅をすることを表しています。
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鎌田さんは、西田哲学が西欧の哲学者アリストテレス、プラトン、カント、ヘーゲルなどの哲学を自分なりに受け入れて消化し、打坐の体験と結びつけながら組織化したものであるとの見方を示しています。坐禅、禅の存在感の大きさを感じ取ることができます。
西田哲学の代表作と言われる「善の研究」は、こんな日々の生活から生まれたことがわかります。
「正しい身体の在り方、静かで深い呼吸法、豊かで広い心の持ち方を学ぶのが禅でなければならない。一言でいえば生活を正すことである」
鎌田さんは禅をこう定義しています。西田博士が毎日、坐禅に取り組み、規則正しい生活を維持したこともわかってきます。多くの偉人と同じように、勤勉の大切さでしょう。
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2018年6月5日の読売新聞によると、西田博士の未公開の直筆ノート50冊が東京都内の遺族宅で見つかったそうです。「倫理学」「宗教学」のノートもあるといい、2020年に出版される計画だそうです。これらの直筆ノートを読んで、西田哲学をさらに深く知りたいものです。