「神・時間術」(樺沢紫苑著)の書評・感想 上 実践すべきことが多く、座右の書に 【情報力アップ】

 時間管理に関する本はたくさんありますが、「神・時間術」(樺沢紫苑著、大和書房)は、集中力の大切さに焦点を当てた点で、おもしろい本です。集中力の高い時間帯に、集中力を要する重要な仕事をする。集中力を高め、あるいは、回復させて、仕事の効率を高める--。そんなメッセージがこの本からは伝わってきます。

 書評・感想をまとめてみました。実践すべきことが多く、「座右の書」として、常に、そばに置いていきたい一冊です。

集中力が効果を発揮

 本の冒頭「はじめに」を読むと、集中力を重要視した「神・時間術」が効果を発揮していることがわかります。樺沢さんの精力的な仕事ぶりが紹介されています。

 ・毎日、午前中は執筆時間で年3冊の本を出版
 ・メルマガ、YouTube、Facebok、ブログを毎日更新
 ・月6回の病院診察
 ・月20冊以上の読書と書評を公開
 ・月2、3回のセミナー、講演活動

 これだけでも、普通の人はなかなかできることではありません。

 しかし、さらに、驚くのは、樺沢さんが毎日7時間以上は必ず寝て、自由時間も充実させていることです。

 ・週4、5回のジム通い。週2回の映画鑑賞
 ・月15回以上の夜の会食、パーティー、イベント。話題のレストランやバーめぐり
 ・年100種類以上のウィスキーのテイスティング
 ・年30日以上の海外旅行

 この活動を読んだだけで、樺沢さんの時間管理術が説得力を持っていることがひしひしと伝わってきます。

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抜き書きポイント

 

 まずは、本の中から、重要なポイントを抜き書きしてみました。
 
 ・「時間」は人生の「通貨」です。
 ・時間術を制するものが、人生を制し、仕事で成功し、幸せな家族を築くことができるのです。
 ・「集中力」を中心に時間を考える。
 ・脳のゴールデンタイムを活用して、時間効率4倍
 ・脳科学的に最高のパフォーマンスを発揮できる時間帯に、それに合った仕事をすることで、仕事の効率を2倍以上に高めることが可能なのです。
 ・私たちが日々行う仕事は、非常に集中力を要する仕事と、集中力をさほど使わなくてもできる仕事に二分できます。これを「集中仕事」と「非集中仕事」と呼びましょう。どのタイミングで集中仕事をするか。たったそれだけで1日でこなす仕事量が決まります。
 ・「集中力の高い時間に、集中力の必要な仕事をする」ということです。
 ・「集中力の高い時間」というのは、「起床後の2~3時間」「休憩した直後」「終業間際の時間帯」「締め切りの前日」などがそうです。
 ・「集中力(仕事効率)」×「時間」=「仕事量」
 ・集中力を高める特効薬は「睡眠」
 ・午後や夜にも、高い集中力を必要とする仕事を上手にこなす裏技があります。それが「運動」です。
 ・集中力を高めて時間単位の仕事を増やすことが、結果として仕事の効率をアップさせて、「時間短縮」につながる。それが、「神・時間術」です。

書評・感想

 まだまだ、抜き書きしたい個所はたくさんありますが、どの一文を読んでも、心に響いてくるものばかりです。これらの抜き書きを指針にして本を読むだけで、本の内容が蘇ります。それだけ濃いエッセンスとも言えます。

「集中力(仕事効率)」×「時間」=「仕事量」

 この中で、特に面白いのは、樺沢さんが自らの体験から、

 「集中力(仕事効率)」×「時間」=「仕事量」という公式を導いていることです。

 樺沢さんは約20年前、大学の医局に在籍し、アルツハイマー病の病理研究をしていた時、英語論文がなかなか書けなかったエピソードを紹介しています。朝から夕方までの病院での診察、そして、夕方からの実験を終えて深夜に帰宅すると、疲れがたまってほとんど論文が書けなかったのだそうです。

 ところが、土日、郊外の病院に、緊急対応だけの当直に行き、朝から論文を書き始めると、スラスラと書けたと言います。この時、樺沢さんは、「文章というものは、身体も頭も疲れていない、集中力の高い午前中にしか書けないんだ」と気づき、以後、午前中に書くようになったら、執筆速度は増し、文章のクオリティの劇的にアップしたといいます。

 新しい時間管理術の発見です。

 多くのビジネスパースンも同じでしょう。昼間の仕事を終えて帰宅したら、ぐったりです。そして、食事をして入浴したら、すぐに眠くなってしまいます。残業で帰宅が遅れたら、なおさらです。とても、精神力だけで文章を書くということはできません。私も会社員時代は、よく、この疲労感を感じ、なんとかならないか、と苦悩しました。

 「集中力(仕事効率)」×「時間」=「仕事量」という公式の重要性がよくわかります。

集中力の高い時間帯

 樺沢さんはそのうえで、

 「起床後の2~3時間」

 「休憩した直後」

 「終業間際の時間帯」

 「締め切りの前日」

 などを集中力の高い時間帯として挙げています。この時間帯に、重要な仕事をすれば、効果がアップするという訳です。ひとつひとつ考えると、なるほど、と思えるものばかりです。特に、重要なのが、「起床後の2~3時間」でしょう。これらの時間帯をどう、うまく使えるかは、まさに、人生の在り方を左右します。

 「『時間』を『どのように使うのか?』によって、ありとあらゆるものを手に入れることができます。しかし、1日は24時間しかないので、『それをどのように使うのか』で人生が決まります」。

 「『「時間の使い方』は、あなたの『人生の使い方』」。

 樺沢さんはこう、時間の大切さを強調しています。

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「集中仕事」と「非集中仕事」

 ビジネスパーソンは毎朝、オフィスに着くと、メールをチェックしたり、資料や本に目を通したりして、一日の仕事をスタートさせますが、樺沢さんは、これらは、集中力の高い時間帯にはすべきではないとしています。たとえば、メールチェックは、集中力をあまり必要とせず、「脳負荷」の少ない非集中時間にもできるとしています。

 朝一番、まずは、最も重要で、緊急度の高い仕事に全力投球するということでしょう。脳のパフォーマンスを最大限、活用できる仕事に集中すべきです。メールなら、タイトルだけチェックして、どうしても即時対応の必要のあるものだけ、応答すればいいということになります。重要な仕事をして、少し疲れたら、気分転換も兼ねて、メールチェックを行ってもいいでしょう。集中力が落ちていく午後、時間のある時にチェックしても十分にこなすことができます。

 常に、仕事などですべき課題を抱えたら、その都度、それが集中仕事なのか、非集中仕事なのか、しばし、立ち止まって考える習慣を身に着けたいものです。

集中力回復のために

 集中力の高い時間に、集中力を要する重要仕事をする。この考えはこれまで述べたように、非常に面白いものですが、睡眠、そして、運動で、集中力を回復していこうという考えもまた、深く考えさせられます。

 樺沢さんは、睡眠を「特効薬」、運動を「裏技」としています。

 睡眠は確かに、うまく取ることで、集中力回復に効果があります。まさに、「起床後の2~3時間」はしっかり眠った後の時間で、脳の働きがすっきりとしていることは誰でもが実感できます。私も疲れたら眠るように努めています。「疲れたら、眠る」「疲れたら、眠る」が口ぐせになっています。特に、昼食後や疲れた時はすぐに眠くなりますから、この時、15分くらい短時間、眠ることはとても有効です。

 ちょっと驚いたのが、運動が集中力回復に効果があるとされた点です。1回60分から90分の有酸素運動をすると、頭も体もリセットされるそうです。樺沢さんは週4、5回、運動をするといい、スポーツジムから外に出ると、一目散にカフェに駆け込み、パソコンを広げて執筆するといいます。朝の「ゴールデンタイム」と同じような状態になって、執筆が猛烈にはかどるそうです。

 散歩をすると、頭がすっきりし、いいアイディアが生まれることが多くあります。散歩も有酸素運動ですから、その効果が実感できます。午後や夕方、仕事などで疲れたら、運動をするいいことがわかります。

 睡眠と運動をうまく組み合わせて、集中力を回復していく。今後、この「法則」もうまく活用したいものです。

まとめ

 「成果をあげる者は仕事からスタートしない。時間からスタートする。計画からもスタートしない」

 「成果をあげる者は、時間が制約要因であることを知っている」

 「時間は特異な資源である。主要な資源のうちでは、資金は豊富にある。・・・もう一つの資源である人材は、雇うことができる。ところが時間は、借りたり、雇ったり、買ったりして増やすことができない」

 オーストリア・ウィーン生まれの経営学者、ピーター・ドラッカー(1909年-2005年)も著書「経営者の条件」(上田惇生訳、ダイヤモンド社)で、時間の重要性をこう書いています。まさに、樺沢さんの考えと共通します。

 時間とは何か、集中力とは何か、樺沢さんの本を繰り返し読んで、問い直したいものです。