TPPの現状をわかりやすく解説 イギリス加盟の場合のメリットは?

 TPP(環太平洋経済連携協定)加盟11か国は2023年7月16日、ニュージーランドで閣僚級の「TPP委員会」を開き、英国の加盟を正式決定しました。2018年12月のTPP発効以来、新規加盟が実現するのは初めてです。

 TPPの現状はどうなっているのでしょうか。まず、TPPの現状をわかりやすく簡単に解説します。また、イギリスがTPPに加盟した場合のメリットはどうなるでしょうか。TPPについてまとめました。

TPPの現状をわかりやすく解説

TPPとは

 TPPは、Trans-Pacific Partnershipの略で、日本語では、「環太平洋経済連携協定」と訳されています。巨大な自由貿易協定です。

TPPの加盟国は?

 TPPの加盟国は、

 ・日本 
 ・カナダ
 ・メキシコ
 ・ペルー
 ・チリ
 ・ベトナム
 ・ブルネイ
 ・マレーシア
 ・シンガポール
 ・オーストラリア
 ・ニュージーランド

 の11か国で、半分の6か国が批准したのを経て、2018年12月に発効しました。

 今回、英国が新たに加わることになりました。

TPPがビジネス、暮らしをこう変える (日本経済新聞出版)

TPPの意味は?

 TPPは、広い太平洋をはさんで、巨大な自由貿易体制を構築しようとするものです。加盟国は、アジア太平洋地域で、

 人、モノ、カネの自由往来を可能にする
 ほとんどの関税を撤廃、引き下げる
 関税撤廃を阻む規制や制度を「非関税障壁」として廃止する
 投資や知的財産、サービスについて、共通ルールも策定する

 ことで合意しています。

 TPP11か国の国内総生産(GDP)は10兆8000億ドルで、世界全体の12%になっていました。人口でも約5億1000万人を抱えます。

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イギリス加盟の場合のTPPのメリットは?

TPP側にとってのメリット

 イギリスは、GDP2兆8000億ドル、人口6000万人ですので、イギリスがTPPに加盟することで、TPPのGDPは14兆6000億ドル、人口は5億8000万人になります。

 この結果、TPPのGDPは、現在の世界全体の12%から15%に拡大します。EUのGDP15兆ドルに迫る経済規模となります。

イギリスにとってのメリット

 一方、イギリスは2020年12月末、EU(欧州連合)を完全離脱してから、自由貿易協定(FTA)の締結を世界で推進しています。2021年1月1日に発効した「日英包括的経済連携協定」(EPA)もそのひとつです。

 今回のTPP加盟申請も自由貿易協定の推進の一環で、経済成長が著しいアジア太平洋地域をにらんで行いました。TPPに加盟することで、イギリスにとっても、経済発展を目指すことができます。

TPPと英国の交渉は?

 TPP加盟11か国は2021年6月2日、閣僚級委員会を開き、同年2月に加盟申請していたイギリスとの協議を開始することを決定しました。2021年夏以降、イギリスとTPP加盟国で作業部会が開かれ、上述の

 人、モノ、カネの自由往来を可能にする
 ほとんどの関税を撤廃、引き下げる
 関税撤廃を阻む規制や制度を「非関税障壁」として廃止する
 投資や知的財産、サービスについて、共通ルールも策定する

 を巡って協議してきました。イギリスが全項目を受諾する見通しが立ち、英国の新規加盟が実現することになりました。

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TPPに対する日本の立場

 TPPは当初、

 シンガポール
 ブルネイ
 ニュージーランド
 チリ

 の4か国が目指した自由貿易体制でしたが、アジア経済の潜在力に着目した米国が自ら主導権を発揮し、新しい巨大な自由貿易協定を作ることになりました。

 一時、米国を含めて、12か国体制が目指されましたが、その後、トランプ大統領が2017年1月、「自国優先」の立場からTPP離脱を表明。これを受けて、日本がTPP成立のために尽力してきた経緯があります。

 現在、イギリスのほか、中国、台湾、コスタリカ、エクアドル、ウルグアイ、ウクライナが加盟申請をしています。また、米国は、バイデン政権も自国雇用を優先させる立場から復帰には消極的ですが、米国をTPPにどう取り込むかも大きな問題になります。米国が加わった場合のTPPのGDPは全世界の40%になるからです。

ドキュメント TPP交渉―アジア経済覇権の行方

まとめ

 1929年の世界恐慌後、高い関税をかけて自国の産業を守る「ブロック経済」を取る国が増えたことで、世界経済は低迷しました。この反省から以来、現在まで、国際社会は、関税・貿易一般協定(ガット)、世界貿易機関(WTO)で自由貿易を推進してきた経緯がありました。

 こんな歴史の中で、米国のTPP離脱は、自由貿易の潮流に逆行するものになりました。TPPは、国際社会が自由貿易の原則を維持したものとして評価されます。自由貿易の潮流を軌道に乗せることが出来るか、日本は大きな役割を担っています。

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