国際テロ組織「イスラム国（IS）」の支部組織「イスラム国ホラサン州（ISIS－K）」が２０２１年８月末、アフガニスタンの首都カブールの国際空港付近で自爆テロを仕掛け、この自爆テロで、アフガニスタンの人々や米兵、イスラム主義勢力「タリバン」の戦闘員ら約１８０人が死亡しました。
「イスラム国ホラサン州（ISIS－K）」と、アフガンを掌握したタリバンの違いはどこにあるのでしょうか。簡単にわかりやすく解説しました。
イスラム国ホラサン州とタリバンの違いは？ 現状や思想などの違いを簡単にわかりやすく解説
イスラム国ホラサン州とタリバンの違い 成立から現在まで
イスラム国ホラサン州
イスラム国ホラサン州は２０１５年１月に設立されたイスラム過激派勢力です。当時、国際テロ組織「イスラム国」は、シリア、イラクの多くの地域を支配して勢力を伸ばしており、イスラム国ホラサン州は、そのイスラム国の勢いに同調する形で作られました。中東、アジア、アフリカには、イスラム国ホラサン州のようなイスラム過激派勢力が１０以上あります。
ホラサン州は、イラン、アフガニスタン、パキスタンの地域を指しています。
イスラム国ホラサン州の戦闘員は、パキスタンの反政府勢力「パキスタン・タリバン運動（TTP）」に反発して脱退したメンバーが中心となっています。国際テロ組織「イスラム国（IS）」と同様、多くが、イスラム過激思想を抱く若者です。
イスラム国ホラサン州にはこのほか、
タリバンを脱退したメンバー
中央アジアの過激派組織「イスラム運動ウズベキスタン」のメンバー
も加わっています。
メンバー数は一時、４０００人を超えたとされていましたが、現在は、１５００～２０００人とみられています。強硬派がほとんどを占めているのが特徴です。
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タリバン
タリバンは１９９４年１１月、ソ連軍のアフガニスタン撤退（１９８９年）後、各勢力（部族）の間で内戦に陥ったアフガンで設立されたイスラム主義勢力です。南部カンダハルの制圧を手始めに、次第に支配地域を増やし、１９９６年９月、全土をほぼ制圧し、政権を樹立しました。
イスラム国ホラサン州に比べると、２０年以上前から存在している勢力です。
しかし、タリバンは、米中枢同時テロ（２００１年９月１１日）の首謀者ウサマ・ビンラディン容疑者を保護し、身柄引き渡しを拒否たため、米軍がタリバンに対して空爆を実施しました。この結果、タリバン政権は２００１年１２月、崩壊しました。
その後は、タリバンは２０１８年から、トランプ米政権と駐留米軍の撤退問題を協議し、２０２０年２月、アメリカと和平合意に達しました。駐留米軍は８月末までに撤収しました。
国連安保理の報告書によると、メンバーは約１０万人で、そのうち５万５０００人～８万５０００人が戦闘員とみられています。行政経験に富んだ人材が少ないため、今後、どう政権運営していくかが大きな課題となりそうです。
パシュトゥン人が大半を占めますが、
タジク人
ウズベク人
トルクメン人
などの民族のタリバンに加わっています。
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イスラム国ホラサン州とタリバンの違い 目指すもの
イスラム国ホラサン州
イスラム国ホラサン州がまず目指しているのは、ホラン州（イラン、アフガニスタン、パキスタン）のイスラム化です。
さらに、国際テロ組織「イスラム国（IS）」と同様、全世界でも、イスラム化を進めたいとの思惑があります。
タリバン
タリバンは、アフガニスタンで、厳格なイスラムの統治体制を確立することを目指しています。アフガニスタンの支配のみが対象です。
イスラム国ホラサン州が世界をも視野に入れているのに対して、タリバンは、アフガニスタンに限定しているのが特徴です。
イスラム国ホラサン州とタリバンの違い テロ活動
イスラム国ホラサン州
イスラム国ホラサン州は、ジハード（聖戦）を掲げて活動しています。特に、
市場
病院
学校
公共施設
など一般国民が生活する場所を対象として、無差別の自爆テロや銃撃テロを企てているのが特徴です。
これらの場所は、ソフトターゲットと呼ばれ、多くの国民がいることから、多くの死傷者が出ます。
ソフトターゲットは、警備が薄いため、イスラム国ホラサン州にとってはテロを仕掛けやすく、多くの死傷者が出ることから、自らの存在感を示しやすいというメリットがあります。
タリバン
タリバンは、これまで反政府勢力として、軍事施設や政府施設などに対して、テロ行為を行ってきました。これらの施設はハードターゲットと呼ばれます。
タリバンは、イスラム国ホラサン州と違って、ソフトターゲットを狙うことはあまりありませんでした。また、アフガニスタンの他の国ではテロ行為を行っていません。
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イスラム国ホラサン州とタリバンの違い 国際テロ組織「アル・カーイダ」との関係
イスラム国ホラサン州
イスラム国ホラサン州は、アフガニスタンで、アル・カーイダと敵対関係にあります。イスラム国ホラサン州はもともと、アル・カーイダから生まれましたが、内部分裂で敵対するようになりました。
タリバン
タリバンは公式では、アル・カーイダと絶縁したとしています。ただ、アル・カーイダがタリバンの最高指導者アクンザダ師に忠誠を誓ったといい、タリバンはアル・カーイダの保護を約束したとも言われています。
タリバンのテロ組織「ハッカーニ・ネットワーク」を率いるハッカーニが師（副指導者の１人）がアル・カーイダとの関係を深めているともされています。
まとめ
イスラム国ホラサン州はこれまで、タリバンに対して、自爆テロや攻撃をたびたび繰り返しています。アフガニスタンで全権掌握したタリバンが新政権を構築していく中で、イスラム国ホラサン州の存在は大きなネックのひとつになりそうです。
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