言葉は、意思伝達のためにとても大切です。本来の言葉を正しく使い、日々のコミュニケーションを滑らかにしたいものです。ただ、言葉に耳を傾けると、本来の言葉とは違って使ってしまっている言葉があります。「存亡の機」と「存亡の危機」もそんな言葉のひとつです。
存亡の機とは、どんな意味なのでしょうか。存亡の危機という使い方でもいいのかも含めて、存亡の機についてまとめました。
存亡の機とは、どんな意味
まず、存亡の機の存亡について、国語辞典で調べて見ましょう。
「存在と滅亡。存続するか、ほろびるかといこと」(明鏡国語辞典)
「(国家・制度など長く続いてきたものが)引き続き存在するかそのまま滅びてしまかということ」(現代新国語辞典)
となっています。
ですから、存亡の機は、
このまま続くか、
滅び去ってしまうか、
重大な局面に直面していることを意味しています。まさに、どちらに傾くか分岐点にある状態です。
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存亡の危機という使い方でもいい?
ただ、すべての世代で多くの人々が、存亡の危機を使っています。
文化庁が毎年2、3月に行っている「国語に関する世論調査」の平成28年度版によると、存亡の機、存亡の危機を使っている割合は以下のようになっています。
存亡の機 6.6%
存亡の危機 83.0%
両方使う 2.3%
どちらも使わない 4.8%
わからない 3.4%
とても興味深い結果です。
「国語に関する世論調査」は、存亡の機が本来の使い方としています。ただ、文化庁は、存亡の危機はよく使われており、誤用とまでは言えないとの見方を示しています。
存亡の危機が使われるのは、危機感が強調されるからでしょうか。しかし、存亡の危機にすると、滅び去ってしまう、という否定的な意味のみとなってしまうという解釈もあります。
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その他の本来の使い方も紹介
同世論調査は、存亡の機、存亡の危機のほかに、本来の使い方はどちらかについても紹介しています。以下の通りです。
はっきり言わないことを意味する「言葉を濁す」については、
言葉を濁す 74.3%
口を濁す 17.5%
両方使う 3.9%
どちらも使わない 3.4%
わからない 1.4%
これは本来の使い方が多くなっています。
逆に、不当なやり口で、失敗させられる「足をすくわれる」については、
足下をすくわれる 64.4%
足をすくわれる 26.3%
両方使う 1.9%
どちらも使わない 6.0%
わからない 1.4%
と、本来とは違った使い方が多くなっています。
まとめ
日々の生活の中で、新しい言葉が生まれるのは当然でしょう。特に、若い世代は、世相を敏感に切り取って、新しい言葉を使うことも多くなっています。ただ、古来から脈々と使われてきた言葉も大切にしたいものです。
文化庁の「国語に関する世論調査」は平成7年から毎年、行われています。いろいろな言葉がどう使われているのか、じっくり読むと、言葉の変遷、実態が理解でき、とても役立ちます。一読するといいでしょう。
トップの写真は、例解新国語辞典(三省堂)
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