「ご苦労様です」は目上の人へのねぎらいで適切? 「お疲れ様です」との違いは?

 ねぎらいの言葉は、細やかな心を込めて使いたいものです。「ご苦労様です」は、そんなねぎらいの代表的な言葉ですが、状況に応じて適切に使わないと、相手に不快感を与えてしまう恐れがあります。

 「ご苦労様です」は目上の人へのねぎらいの言葉として適切でしょうか。「お疲れ様です」との違いも含めて、「ご苦労様です」についてまとめました。正しく使い分けて、ねぎらいの気持ちを表現しましょう。

「ご苦労様です」は目上の人へのねぎらいで適切? 「お疲れ様です」との違いは?

 
 「ご苦労様です」は目上の人へのねぎらいで適切かどうか、いくつかの国語辞典をチェックしてみましょう。 

 例解新国語辞典(三省堂)は、「『御苦労様』は、目上の人が目下の者にかけることば。『おつかれさま』は目下から目上にも言える」としています。

 また、明鏡国語辞典(大修館書店)は、「目上の相手に使うのは失礼とされる」「目上の人に対しては『お疲れ様』を使うほうが自然」と説明しています。

 さらに、学研現代新国語辞典(学研)も、目上の人に対して言う場合は、『お疲れ様』が一般的」としています。

 このほか、ビジネスのマナーに関する本もチェックすると、

 「ご苦労様です」は、目上の人が目下の人にかける言葉

 「お疲れ様です」は、対等の者同士、あるいは、目下の人が目上の人にかける言葉

 となることがわかります。

こんなふうに使うと、大変!

 ですから、こんなふうに使うと大変です。

 「今日も1日、ご苦労様でした」。

 部下が社長にこんな風に言うのと失礼にあたってしまいます。この場合は、「今日も1日、お疲れ様でした」が適切な使い方になります。

 社長が部下に「業績アップに貢献してくれました。ご苦労様」と言うのはいいでしょう。

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「ご苦労様です」と「お疲れ様です」の由来は?

 「ご苦労様」については、江戸時代、殿様が家来に、「あっぱれ。ご苦労であった」と言ったことが由来とされています。よく時代劇で耳にする言葉です。この殿様言葉がその後、延々と引き継がれてきたというわけです。

 一方、「お疲れ様」については、会社員が1日の仕事を終えて会社を出る時に、同僚が「お疲れ様でした」の声をかけたことにあるとする説があります。

 また、終日仕事が続くテレビ業界などでは、朝、昼、晩の区別が難しいため、「おはよう」「こんにちは」「こんばんは」の代わりに、「お疲れ様です」を使ったとの説があります。「ご苦労様」に比べて、新しい言葉です。
 
 ただ、「ご苦労様です」と「お疲れ様です」の由来は、定まったものではありません。 

 過去の歴史を見ると、この二つの言葉がいろいろに使われてきたことがわかります。こんな具合です。

 ・「ご苦労様」は江戸時代、使われていなかった。実際に使われていたのは、「大儀であった」。

 ・江戸時代、「ご苦労様」を目下の人が目上の人に使った。

 ・「お疲れ様」も目上の人が目下の人に使った。

 ・ねぎらいの言葉は、目下の人が目上の人にかけるのはおかしい。従って、「お疲れ様」も使えない。

 ・「お疲れ様」が使われるようになったのは、明治、大正時代から。

 などです。今と、全く違った使い方に驚くばかりです。言葉がいろいろな変遷を経て、今のような使い方になったことがわかります。

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まとめ

 「ご苦労様です」は、目上の人が目下の人にかける言葉

 「お疲れ様です」は、対等の者同士、あるいは、目下の人が目上の人にかける言葉

 であることをしっかり意識して、ビジネスの場で、うまく使い分ければいいでしょう。案外、知らない人多いので、注意が必要です。

 ただ、二つの言葉がいろいろに使われてきたことも頭に入れて置くと、状況によっては、「ありがとうございました」など感謝の言葉に置き換えることもできます。

 私は、「ご苦労様」「お疲れ様」の「様」について、書く時は、「さま」とひらがなにしています。画数が多いと、硬い印象になるからです。言葉は時代の中で、人々の生活の中で変わるものです。そんな中で、私の小さなこだわりがあってもいいと思っています。

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