福沢諭吉著「福翁自伝」は面白い おすすめの読み方は?

 福沢諭吉著の「福翁自伝」は面白い1冊です。その理由はどんな点にあるのでしょうか。「福翁自伝」のおすすめの読み方はどうなるのかについてまとめました。

福沢諭吉著「福翁自伝」は面白い。おすすめの読み方は?

 斎藤孝・明治大学教授は著書「語彙力こそが教養である」の中で、蘭学者で慶応義塾大学の創設者、福沢諭吉が書いた「福翁自伝」を「全国民必読の書」として、一読することを勧めています。

 福沢諭吉が生きた幕末から明治にかけての歴史的な背景も学べるだけでなく、豊かな語彙で語彙力が磨かれることを、その理由にあげています。

 早速、本棚から、「福翁自伝」を取り出し、読み返してみました。やはり、何度、読んでも面白い自伝でした。

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幕末から明治にかけての歴史的な背景を学ぶ

 「福翁自伝」には、福沢諭吉の

 幼少時期の暮らしぶり
 長崎遊学
 緒方洪庵の塾での勉強ぶり
 二度にわたる渡米
 欧州使節への参加
 攘夷論の考え
 暗殺の心配
 老余の半生

 などが生き生きと描かれています。

 まるで、小説を読んだり、映画を見た時のような躍動感があります。新しい時代に向けて、福沢諭吉が奮闘しています。日本の新たな課題も浮き彫りになってきます。

 斎藤教授は、

 福沢諭吉の記憶力の良さ
 自分を過度に大きく見せようとしない態度
 大酒飲みを反省するなど

 本音で語る謙虚さも、「福翁自伝」の魅力であると指摘しています。

 「福翁自伝」は、勝海舟の自伝「氷川清和」と並び、幕末から明治までの歴史的な背景までを理解できる名著、と斎藤教授は書いています。

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豊かな語彙を学ぶ

 「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」

 福沢諭吉の著書「学問のすすめ」の冒頭にあるこの言葉は、人権の平等を訴えたものとして、あまりにも有名です。

 「福翁自伝」を読んでいくと、この言葉が生まれた背景がわかります。福沢諭吉の父親、百助は豊前中津奥平藩の下級士族でしたが、「先祖代々、家老は家老、足軽は足軽、その間に挟まっている者も何年経っても一寸とも変化しない」封建制度を嘆き、諭吉を坊主にすることを望んだといいます。坊主にして名を成してあげたいという親心でした(実際には、坊主になりませんでしたが)。

 「父の生涯、四十五年のその間、封建制度に束縛せられて何事もできず、空しく不平を呑んで世を去りたるこそ遺憾なれ。また初生児(諭吉のこと)の行末を謀り、これを坊主にしても名を成さしめんとまでに決心したるその心中の苦しさ、その愛情の深き、私は毎度このことを思い出し、封建の門閥制度を憤ると共に、亡父の心情を察して独り泣くことがあります。私のために門閥制度は親の敵(かたき)で御座る」

 福沢諭吉は、「福翁自伝」の中で、父親の人生を回想し、封建制度の悪弊を指摘しています。人権の平等は、父親の生涯を見続けた子供の視点から生まれたとも言えます。

 また、母親の於順(おじゅん)は、農民、町民、物乞いなど身分が低い者であっても、軽蔑もせず、嫌がりもせず、丁寧な言葉で語り掛け、分け隔てなく付き合った、と、福沢諭吉は書いています。物乞いを自宅に招き入れ、頭髪にわいた虱を取るエピソードもあります。こんな母親を見ていたからこそ、人権の平等が自然と生まれてきたのでしょう。

 「子は親の背中を見て育つ」「子は親の鏡」ということでしょう。

 今回、「福翁自伝」を読み返して、このことわざが浮かんできました。

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まとめ

 「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」は、ほんの一例の語彙です。この伝記の中には、先にも挙げたように、「攘夷論」や「王政維新」、「暗殺の心配」などの言葉も出てきます。これらの語彙が時代の流れの中で産まれてきたこともわかります。

 自伝を読む。その魅力は増しそうです。

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