「持たない暮らし入門」の特集を楽しく読む 日経おとなのOFF 枡野俊明さんの本も読んで 上

 ミニマリストブームの中、月刊誌「日経おとなのOFF」が、「持たない暮らし入門」という特集を組んでいるのを知り、購入しました。デザイナー、アートコレクター、茶道・華道研究家、医師、写真家、ジャーナリストら各界のトップで活躍する方々が、自らの持たない暮らしの実践や、その哲学を語っています。シンプルに、心豊かに生きる、というのが共通のメッセージでしょう。買って良かったなあ、と思える1冊になりました。

 「『少なさ』こそ、現代の贅沢です」(フランス生まれの文筆家ドミニク・ホーローさん)
 「生き生きと暮らすには、有用なものと、無用でも心躍るもの。その両方が必要です」(木工デザイナーの三谷龍二さん)
 「毎日の『シンプル掃除術』は有酸素運動。ウォーキング要らずです」(医師の南雲吉則さん)
 「多くのものは必要ありません。気に入ったものとだけ、長く付き合います」(作家のの小川糸さん)
 「『あるがまま』より、『ないがまま』。きっと楽に生きられます」(僧侶・作家の玄侑宗久さん)

 どの言葉にも深み、説得力があります。「持たない暮らし入門」の冒頭に並べられたこれらの言葉を読むだけでも、この月刊誌を買った価値があったなあと思います。何度も読み返しました。「人生後半は『小さく、豊かに』」という「持たない暮らし入門」の言葉がずしりと響いてきます。

 ドミニク・ホーローさんは、「魂を養うものだけをそばに置く」「時を経て美しくなるものは長く持つ」など人生後半を軽く生きるためのシンプルリスト10を掲げ、「死ぬまでに大事にしたいもの」として、記録用ノートや茶の香りが染み込んだ急須、職人の手による財布、柘植の櫛、髪留めなどを挙げています。最小限で、いずれも長く愛用しているものばかりです。

 木工デザイナーの三谷さんは、20年間、8.2坪の1LDKという「小屋」で豊かな時間を過ごしてきました。茶道・華道研究家の山﨑仙狹さんは3・11の大震災の大震災を機に、トラック4台分のものを手放し、一軒家から2LDKマンションに移り住んだといいます。医師の南雲さんは、若々しさを保っていることで知られますが、トイレ、風呂、キッチン、床の掃除をして有酸素運動に取り組んでいます。シンプルな生活が心を豊かにしていることがわかります。

 「トヨタの持たない&減らすメソッド」、「服をもちたくなければ『ロジカル』に選ぶべし」、「台所・シンプル化計画」、「小さく豊かに暮らすための発想の転換7」などの記事も、すぐに実践に移せるようなものばかりで、今後、役に立ちそうです。これから、じっくり読んで、できることから、日々の生活に取り入れようと思います。

 「他人の価値観に振り回されないように、余計な悩みを抱えないように、無駄なものをそぎ落とし、限りなくシンプルに生きる。それが、禅スタイル」

 「執着を捨てる。思い込みを捨てる。持ち物を減らす。シンプルに生きるとは、心や体の荷物を捨てることでもあります」

 禅寺の住職で庭園デザイナーも手掛ける枡野俊明さんは、「禅シンプル生活のすすめ」で、こう書いています。持たない暮らしは、禅や仏教の精神とも共通していることがわかります。私は、禅や仏教を勉強し始めたばかりですが、もっと、その勉強を進めていかなくては、と今回の「日経おとなのOFF」の特集を読んで、その思いを強くしました。