「『想定外を想定する』ことが必要なのです」――。ジャーナリストで名城大学教授の池上彰さんの著書「一気にわかる! 池上彰の世界情勢2017」を読むと、こんな一文が目に飛び込んできます。想定外のことが起きたのが2016年の世界潮流であり、2017年も、想定外のことが起き得るとして、池上さんは、ニュースの背景や歴史を学ぶように勧めています。
「2016年は、まさか、という言葉がしきりに聞かれました。イギリスがEUから離脱するかどうかを問う国民投票では、大方の予想を裏切って離脱が決まりました。アメリカ大統領選も、多くの予想とは異なり、ドナルド・トランプ氏が当選しました。世界情勢を予測することの難しさを痛感した一年でした」
池上さんは著書「一気にわかる! 池上彰の世界情勢2017」の冒頭で、こう書いています。まさに、その通りでしょう。多くの専門家の予想もはずれました。
池上さんはそのうえで、過去、ベルリンの壁の崩壊や、ソ連崩壊、中東問題のオスロ合意など想定外のことは起きたとして、2017年の世界情勢を分析するうえでも、「想定外を想定する」ことの必要性を強調しています。2017年、世界では何が起き、どう変わっていくのか。想定外を想定するのは大きな視点となることがわかります。
「2017年に起きること。まずはトランプ旋風が吹き荒れるでしょう」
池上さんはこう書き、昨年秋の米大統領選を制し、今年1月、大統領に就任したドナルド・トランプ氏の政治手腕が大きな焦点になることを指摘しています。米国は、GDP(国内総生産)で世界第1位の大国ですから当然でしょう。特に、トランプ氏は、暴言や差別発言で敵も多く、政治経験のない人物ですから、未知数の部分が多くあります。
トランプ大統領はすでに、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)からの離脱や、地球温暖化防止のための国際的枠組み「パリ協定」の全面的見直し、さらには、移民制限のためのメキシコ国境への壁建設などを表明しています。
どの問題も大きな国際政治課題ばかりで、世界に大きな波紋を投げかけそうです。また、オバマケア(医療国民皆保険)の見直しを巡っては、米国内で大きな政治問題になりそうです。トランプ大統領の一挙手一投足が注目されます。
「『想定外を想定する』ということでいえば、トランプ大統領が、意外に良き大統領になるかもしれないということも想定してみましょう。頭の体操として面白いと思いますよ」
池上さんのこんな指摘も興味深いものです。
「一気にわかる! 池上彰の世界情勢2017」は、以下の5章で構成されています。
1章 トランプ政権誕生で世界はこうなる
2章 トランプ新大統領で変わるアメリカ
3章 覇権主義強める中国とアジア
4章 テロ、移民問題で揺れる欧州、中東
5章 世界と日本
この本は、「毎日小学生新聞」の連載「教えて!池上さん」の記事を元に加筆・編集されたものですから、どの問題についても、背景や歴史、経緯などがわかりやすく解説されています。
何度も繰り返して読むといいでしょう。日々の新聞記事を読んで、疑問に思うようなことがあったら、池上さんの本に戻り、読み返すと、さらに理解が深まります。
2016年版の「一気にわかる!池上彰の世界情勢2016」に戻って、問題の推移を確認することも効果があります。また、共同通信の「世界年鑑」と併読してもいいでしょう。常に、机の上に置いておきたい1冊です。
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「一気にわかる!池上彰の世界情勢2016年」についての記事も合わせてお読みください。
難解なニュースも、やさしく、わかりやすく解説することで定評のあるジャーナリスト池上彰さんの新刊「一気にわかる!池上彰の世界情勢2016」(毎日新聞出版)を興味深く読みました。イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)や、地位の揺らぐ米国、高度成長に急ブレーキがかかった中国、世界に広がる格差と紛争など2016年に大きく動くことが予想される世界情勢を把握することができます。
2016年の世界情勢がどうなるのか。「教科書」として、繰り返し、読み込みたいと思います。
「2015年は、自称『イスラム国』に始まり、『イスラム国』に終わったような気がします。新年早々には、日本人ジャーナリストの後藤健二さんら2人の日本人が殺害されました。欧米諸国は、『イスラム国』に対する空爆を強化しましたが、11月にはフランスで同時多発テロを引き起こし、一般市民が多数犠牲になりました」・・・続きはこちらをお読みください。
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