欧州連合(EU)など欧州の政治、経済ニュースなどに接していると、シェンゲン協定という用語を目にしたり、耳にしたりする機会があります。シェンゲン協定とはどんな内容なのでしょうか。わかりやすく解説します。具体的には、どの国がシェンゲン協定の加盟国、非加盟国なのか、また、メリット、デメリットはどうかなどシェンゲン協定についてまとめました。
シェンゲン協定とは、わかりやすく解説
シェンゲン協定とは、加盟国間の国境審査を撤廃し、加盟国内ならば、自由に出入国できることを規定したものです。
1985年6月、フランス、当時の西ドイツ、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクの5か国が、ルクセンブルクの小村シェンゲンで調印し、その後、協定は1995年に発効し、実施に移されました。シェンゲン協定の名前は、ルクセンブルクのこの小村シェンゲンにちなんでいます。
欧州連合(EU)加盟国は一部の国を除き、1993年1月、単一市場を完成させました。その結果、EU域内のモノ、カネ(資本)、サービス、人の移動は自由になりましたが、その後に実施されたシェンゲン協定は、EU市場統合の原則を強く支えるものになりました。
人の自由往来を保証することで、より大きな市場で経済を活性化させることが最大のねらいです。
また、シェンゲン協定は、加盟国間の警察・司法協力も定めており、欧州統合の歩みを象徴するもののひとつになっています。
シェンゲン協定の加盟国、非加盟国は?
シェンゲン協定の加盟国は、EU27か国のうち、アイルランド、キプロスを除く25か国と、EU以外の欧州4か国の計29か国となっています。
具体的には、以下の通りです。
EU加盟国でシェンゲン協定にも加盟している国 25か国
- イタリア
- エストニア
- オーストリア
- オランダ
- ギリシャ
- スウェーデン
- スペイン
- スロバキア
- スロベニア
- チェコ
- デンマーク
- ドイツ
- ハンガリー
- フィンランド
- フランス
- ベルギー
- ポーランド
- ポルトガル
- マルタ
- ラトビア
- リトアニア
- ルクセンブルク
- クロアチア
- ブルガリア
- ルーマニア
クロアチアが2023年1月から、シェンゲン協定加盟国となりました。
また、ブルガリア、ルーマニアは2024年3月31日から、シェンゲン協定締結国になりました。協定締結国の国民は、入国審査を受けることなく、国境を越えられますが、ブルガリアとルーマニアについては、国境審査が撤廃されるのは、空路と海路にみに限られ、陸路では国境審査が続くことになります。不法移民に懸念してオーストリアが陸路での国境審査を継続するよう求めているためです。
EU加盟国以外のシェンゲン協定加盟国 4か国
- アイスランド
- スイス
- ノルウェー
- リヒテンシュタイン
EU加盟国でシェンゲン協定には加盟していない国 2か国
- アイルランド
- キプロス
- イギリスはEU加盟時代、シェンゲン協定には加盟していませんでした。2020年1月末、EUを離脱しました。
シェンゲン協定のメリットは?
当初5か国で実施されたシェンゲン協定はその後、EU加盟20か国、さらに、EU加盟国外の4か国に加わったことで、計29国となり、国境がない市場が拡大される結果になりました。
協定のねらい通り、経済の活性化を促し、各国の経済成長に貢献してきました。
加盟国の国民は、国境でパスポート審査なしで、次の国に入出国できます。時間短縮にもなります。広大な欧州大陸を高速列車などで旅行すれば、国境検問所もありませんから、いつ国境を越えたのかわからないほどです。
シェンゲン協定のデメリットは?
いったん、シェンゲン協定加盟国に入ってしまえば、加盟国内は自由に行き来できます。こうしたことから、不法移民や難民が流入しやすくなり、2015年には、中東、北アフリカ諸国から、移民や難民がギリシャやイタリアなどの南欧諸国に流入、加盟国内を移動し、大きな問題となりました。
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テロ、犯罪組織や麻薬の流入も懸念されていいます。シェンゲン協定は、警察、司法協力も定めていますが、加盟国は各国独自の立場を尊重する傾向が強く、警察、司法協力が十分に効果を上げているとは言えないのが現状です。今後の大きな課題になっています。
国境封鎖や入国制限の根拠は?
かつて、新型コロナウィルス感染防止のため、シェンゲン協定加盟国のいくつかは国境封鎖や入国制限の措置を取りましたが、その根拠は、シェンゲン協定が定めている「国内の治安に対して深刻な脅威がある場合」にありました。その場合は、一時的な国境審査の復活を認めたものでした。
まとめ
こうしてみてくると、シェンゲン協定のメリットは大きいものの、デメリットもまだまだあることがわかります。英国が2020年1月末、EUを離脱した中で、EUを中心とする欧州諸国がどう協力関係を構築するのか、シェンゲン協定を巡る動きもその目安の一つになりそうです。
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