勝海舟のエピソードから生き方を学ぶ 「筆写」の凄さ、大切さがわかる 自伝「氷川清和」を読んで

 勝海舟(1823年-1899年)は幕末から明治初期にかけて、幕臣や政治家として活躍しました。勝海舟のエピソードから人生の生き方を学ぶと、勝海舟が知識を高めるために取り組んだ「筆写」の凄さ、大切さがよくわかります。自伝「氷川清和」を読んでみました(トップの写真は、勝海舟が名付けた氷川神社内にある「四合(しあわせ)稲荷」)。

勝海舟のエピソードから生き方を学ぶ 筆写の凄さ、大切さがわかる 自伝「氷川清和」を読んで

 勝海舟の自伝「氷川清和」や伝記「勝海舟伝」(勝部真長著)によると、勝海舟は本や文書を次々に写し取る「筆写」を行っていました。

 全58巻の蘭和辞書を2部、書き写したのをはじめ、筆写は、

 手紙
 辞令
 判決文
 日記

 など広範囲に及びました。

 手で書き写しながら、自分の考えを深めたことでしょう。

 旺盛な知識欲
 勤勉さ
 粘り強さ

 が、勝海舟を歴史上の大人物にしたことがわかります。

 勝海舟の筆まめぶりは、東京・赤坂の蘭学塾に入塾し、蘭和辞書「ズーフ・ハルマ」(全58巻)を2部、筆写したことでも知られています。この蘭和辞書は全58巻で60両と高価で、貧乏な勝海舟には買うことができませんでした。

 勝海舟は、蘭医から1年10両で貸してもらい、半年で1部を、さらに、もう半年で1部を筆写したそうです。10両を支払うことができなかったため、2部のうち1部を売って、支払ったといいます。

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 オランダの兵書も、四谷番町に住む与力から借りて、筆写しました。与力が門外不出の書物としたため、借り出せるのは、夜間のみで、勝海舟は当時住んでいた本所から四谷番町まで、往復約12キロを歩いて通い詰め、半年で全部を写し取ったそうです。

 勝海舟の熱心さに感動した与力が、この本を勝海舟に譲渡しました。勝海舟は、のちに金に困った時、写本の方を30両で売り、生活の糧にしたといいます。

 蘭和辞書の筆写本は今も、勝家に残っているそうです。一度、見たい気がします。

 コピーなどない時代ですから、人々が、本や書類を写し取るのは珍しいことではありませんでしたが、勝海舟は、手紙、辞令、判決文など何でも関心を持ったものを筆写していきました。筆写とは少し違いますが、日記も2部作ったといいます。

 「根気が大切だ」

 勝海舟は、自伝「氷川清和」などの中で、こう書いています。

 手で書きながら、考え、その思考を深める。勝海舟はこの点について書いていませんが、書き写す中で、自然と、このプロセスを経ていたことでしょう。

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勝海舟の「筆写」は、ウラジーミル・レーニンとも共通

 勝海舟の「筆写」という生活スタイルを知ると、ソ連を作った政治家ウラジーミル・レーニン(1870-1924年)のノートを思い出します。

 作家の佐藤優さんは、「ノート作りの一番の天才」と称賛しています。「知的トレーニングの技術」の著者、花村太郎さんも「ノートのとりかたはレーニンに学ぶといい」と書いていま す。

 レーニンは、主に図書館で借りて読んだ本の抜き書きをノートに写し、コメントを加えました。重要な部分を強調して、自分の意見を付記するとともに、「機知に富んでいる」「弱い」などのコメントを付記しました。必要な時にはいつでもノー トさえあれば、本の内容を復元できるように工夫されていました。

 花村さんは、「読書記録(抜き書き・要約)とそれへの自分のコメント、 さらにノートを読み返しての感想、というように反復使用に耐えうるノートの取り方の見本だ」と分析しています。

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まとめ

 勝海舟の筆写やレーニンのノートをもう一度、振り返りながら、ノートの取り方をもっと充実させていきたいものです。

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