
気象庁は2022年6月から、積乱雲が次々にできて大雨を降らす「線状降水帯」の発生を半日前に予報することにしています。気象庁は2021年6月17日から、「線状降水帯」が発生した場合、警戒を呼び掛ける緊急情報の「顕著な大雨に関する情報」を発表していますが、さらに、線状降水帯による災害を避ける措置を強化するため、半日前の予報に取り組むものです。
線状降水帯とはいつから注目されるようになったのでしょうか。線状降水帯の発生システムについても簡単に説明します。
線状降水帯とはいつから注目されるように?
線状降水帯は2014年8月、広島市で発生した豪雨で注目されるようになりました。この時、広島市では、3時間で220ミリの大雨が降り、70人以上が土砂災害の犠牲になりました。
集中豪雨の時、線状の強い雨域があることは知られていましたが、広島市の大量の雨と犠牲者で一気に注目されるようになりました。
それ以後も、線状降水帯がしばしば発生しました。2020年夏の熊本豪雨では、3時間に330ミリの雨が降り、球磨川が氾濫して、死者が出る土砂災害が起きました。この熊本豪雨がきっかけとなって、線状降水帯に関する緊急警報の「顕著な大雨に関する情報」を出す機運が高まりました。
気象庁は2021年6月29日未明、沖縄本島北部に線状降水帯が発生したとして、「顕著な大雨に関する情報」を発表しました。同情報が発表されたのは全国で初めてとなりました。
線状降水帯の発生のメカニズムも簡単に説明
線状降水帯の発生のメカニズムも簡単に説明しましょう。
海から流入する暖かく湿った空気によって陸上で次々に、積乱雲が発生します。この積乱雲が線状に連なることで、豪雨となります。積乱雲は長さ10キロで、高さ15キロ程度の規模で、一つの積乱雲で最大50ミリの雨を降らします。局地的な豪雨で、マスコミでは、「ゲリラ豪雨」とも呼ばれます。
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線状降水帯は、
暖かく湿った空気が継続して流れ込む
その空気が山などにぶつかって上昇する
上空に寒気がある
上空の風に流されて移動する
ことで発生します。いくつもの積乱雲が次々に列になって発生することになり、広範囲の地域で大量の雨を降らせます。
気象庁は、
長さ50キロから300キロ
幅20キロから50キロ
高さ15キロ程度
の線状に延びる強い雨域と定義しています。
雨は数時間にわたって降り続け、降雨量は、数百ミリとなります。
この中で、「顕著な大雨に関する情報」は、3時間の雨量が100ミリ以上の区域が500平方キロメートル以上に広がった時に出されます。
豪雨をもたらす積乱雲がいくつもいくつも相次いで発生するということを考えれば、線状降水帯のもたらす大雨は簡単にイメージできるでしょう。
2021年は、線状降水帯警戒緊急情報の「顕著な大雨に関する情報」が、
6月29日 沖縄
7月 1日 東京(伊豆諸島北部)
7月 7日 島根・鳥取
7月10日 鹿児島(2回)
8月 9日 島根
8月12日 福岡・熊本
などで発令されています。
気象庁の線状降水帯の発生予測
気象庁の「顕著な大雨に関する情報」は、線状降水帯が発生した時に出されるものですが、線状降水帯を予測するものではありませんでした。「顕著な大雨に関する情報」が出された時はすでに、線状降水帯が発生していますから、早期に避難するなど警戒が必要となっていました。
線状降水帯の発生予測はこれまで、難しいものでした。気象庁はレーダーで降雨量を監視していますが、積乱雲のもととなる水蒸気(暖かく湿った空気)を十分に観測できていなかったためです。特に、水蒸気は東シナ海などの海上で発生することが多くなっています。
このため、気象庁は、観測船2隻を海上に派遣して観測するとともに、国内で運航する民間のフェリーや貨物船など計16隻に海上での水蒸気の観測をしてもらうように要請し、半日前に線状降水帯の発生を予報する態勢を整備しました。
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まとめ
線状降水帯が発生すると、雨量の多い集中豪雨となり、大きな被害が出る恐れがあります。気象庁の観測強化に期待するとともに、線状降水帯についての知識も日頃から、しっかり学びたいものです。
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