「知的生産の技術」(梅棹忠夫著) 京大式カードを活用した読書術の「つんどく法」

 「知的生産の技術」は、民族・生態学者の梅棹忠夫さん(1920年-2010年)が書いた本です。知的生産のバイブルとも言えます。1969年発行の本ですが、全く古さを感じさせません。

 読み返すと、京大式カードを活用した読書術の「つんどく法」に改めて、興味を引かれました。

「知的生産の技術」(梅棹忠夫著) 京大式カードを活用した読書術の「つんどく法」

 「本の読み方には、精読、多読などとならんで、つん読というものもあることは、むかしから言われていることである。本棚や机の上に『つんでおく』のであ る。わたしは、この『つん読』法を、かなり積極的に利用している。ただし、よまないでつんどくのではなく、一ぺんよんでからつんどくのである」

 梅棹さんは自らの読書術のポイントをこう書いています。一度読み終わり、重要な部分や面白い箇所に鉛筆で印を付けたら、書斎の机の上に、文字通り、積み上げます。そして、数日、数週間が経過したら、印をつけた部分をカードに書き抜きます。

 忙しさのなかで、やむを得ず、こういう形になったそうですが、本の見方が冷静になって、ポイントをまとめるうえで役立つとしています。

 印をつけた個所は、

 重要
 面白い

 の2点になりますが、梅棹さんがカードに書き抜いたのは、後者の「面白い」の方です。重要な個所は本を読めばわかるからで、一種の電光のように消えてしまう着想、連想を書き留めることにしました。

 「読書は『発見』のための触媒作用であったということができる」

 「『読書二編』法を実行しているのである。二どの読書のあいだにはさまった『つん読』も勘定にいれると、三どよんだことになるのであろうか」

 と梅棹さんは書いています。

 何度、読み返しても、新しい発見があります。

知的生産の技術 (岩波新書)
知的生産の技術 (岩波新書) [ 梅棹 忠夫 ]

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「梅棹ルール」の適用

 現在、各界で活躍している人々の読書術を見ても、「梅棹ルール」がどこかで適用されていることがわかります。

 多摩大学の久恒啓一教授は、まず、本を通読して、どのようなことが書かれているかをつかむといいます。そうしたら、黄色のマーカーを片手に、

 ポイントと思う部分
 自分にとっておもしろかった部分
 気になった部分
 わからない部分
 キーワード

 などに印をつけるそうです。次に改めて目次を眺めながら、大まかに 図をデッサンします。「仮図解」です。

 仮図解を見ながら、再び、全体を読み、重要な点を把握するとともに、疑問点や論理の展開を確かめながら、図解を完成させるといいます。「『図解(ずどく)』という読み方を提唱しています」と久恒さんは著書「図で読み解くドラッカー理論」で書いています。

 読んだ本の内容を、図で表示する。視覚にも訴え、効果の上がるものと言えます。前提として、要約する力が求められるのは言うまでもありません。

図解で身につく!ドラッカーの理論 (中経の文庫)
図解で身につく!ドラッカーの理論【電子書籍】[ 久恒 啓一 ]

 コンサルティング会社を経営する本田直之さんは、著書「レバレッジ・リーディング」の中で、自らの読書術を書いています。本を読んだら、重要な所に線を引 いたり、印をつける。そのページの角は折っておく。読み終わった本については、1週間に一度くらいの割合で、パソコンに打ち込んで、「レバレッジ・メモ」 という「究極のメモ」を作るそうです。

 ここでも、寝かせることが適用されています。そして、打ち込むのは、丸写しではなく、自分の言葉で要約していきます。「レバレッジ・メモ」が完成したら、A4用紙に印刷して、何度も読み返し、メモの内容を実行していくといいます。

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まとめ

 3人に共通するのは、読んだままにせず、何度も繰り返し読むということでしょう。時間の経過で、冷静に、再度、本を読み返すことも心がけています。工夫は3人3様です。

 「知的生産の技術」を読み返したら、読書術で、これだけのことを考えました。この本はやはり、優れた著書なのだなあ、との思いを強くしています。

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