シリア内戦の原因や現在の構図は? 死者、難民数増大の中、終結の可能性は? 

 シリア内戦は2021年3月15日、発生から10年が経過し、11年目に入りました。シリア内戦の原因や現在の構図はどうなっているのでしょうか。シリア内戦長期化で死者、難民数が増大する中、終結の可能性はあるのかも探ってみました。

シリア内戦の原因や現在の構図は?

シリア内戦の原因は?

 シリア内戦の原因としては、「アラブの春」という北アフリカ、中東地域で発生した民主化運動が大きく影響しています。

 2010年12月、北アフリカのチュニジアで、長期独裁政権の打倒を目指す運動がインターネットによって一気に広がり、ベンアリ大統領は退陣しました。「ジャスミン革命」と呼ばれています。

 この民主化要求運動は、中東地域にも次第に波及、エジプトでは2011年2月、30年以上独裁体制を率いてきたムバラク政権が崩壊しました。また、リビアでは2011年8月、約42年間、独裁体制にあったカダフィ大佐の政権が退陣しました。イエメンではなお、内戦が続いています。

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 シリアにもこの民主化の波は押し寄せます。シリアでは、1970年以降、軍人だったハフェズ・アサド大統領、その次男のバッシャール・アサド大統領親子が政権の座にありましたが、2011年3月15日、民主化要求デモが起き、アサド政権がこのデモを武力制圧したことで、内戦に発展しました。

シリア内戦の構図は?

シリア内戦における宗教対立

 シリア内戦は当初、宗教対立の色彩が濃いものでした。アサド政権は、国内で20%弱のイスラム教少数派アラウィ派(シーア派系)が中枢を担ったため、70%以上を占める多数派スンニ派の国民が、アサド政権の少数派支配に反発する形となりました。スンニ派の意見がアサド政権では反映されていないという不満です。

世界の大国が介入

 ただでさえ、宗派対立は紛糾しましたが、この宗教対立の混乱に拍車をかけたのが、世界の大国がそれぞれの思惑を秘めてシリア内戦に介入したことです。支援の構図は以下のようになっています。

 アサド政権支援 ロシア、イラン
 反政府勢力支援 米国、欧州諸国、トルコ、サウジアラビア

イランの場合

 イスラム教シーア派大国のイランは、中東における覇権を確立しようと躍起になっています。隣接するイラク、シリア、レバノンを結ぶ「シーア派の弧」を構築しようとしているのです。

 イラクはシーア派が政権を握り、レバノンではシーア派組織ヒズボラが展開しています。そして、シリアはイラクとレバノンの中間にあり、イランが、シリアのシーア派系アラウィ派のアサド政権を支える理由となっています。

 イランはシリア内戦発生以来、アサド政権に数十億ドルの支援を送り、作戦立案にあたる軍事顧問、民兵をそれぞれ約2000人派遣してきました。まさに、宗派対立の「主役」を担っているとも言えます。

ロシアの場合

 シリア北西部タルトゥスにロシア艦船の補給拠点となる基地があります。地中海での重要な活動拠点であり、その存続、維持がアサド政権支援の最大の狙いとなっています。

アメリカの場合

 アメリカは自由や民主主義を重視する立場から反体制派勢力を支援しています。アサド政権は独裁体制であり、シリア国民にとって自由も民主主義も保証されていないとの立場です。

 オバマ前政権が武器を提供したのに対し、トランプ政権は一時、武器供与を停止していましたが、アサド政権が反体制派拠点に化学兵器を使用したとして、アサド政権の軍事基地、施設を空爆しました。

 トランプ政権は2017年4月、単独で巡行ミサイル・トマホークでアサド政権の軍基地などを砲撃しましたが、2018年4月には、フランス、イギリスと共同でアサド政権の軍事基地、施設を攻撃しました。バイデン大統領も同じ立場を取っています。

イスラム国の台頭

 シリア国内の対立に、周辺国が介入して、内戦は複雑化しましたが、この混乱に乗じて、一時、シリア北部で勢力を拡大したのがイスラム過激派組織「イスラム国」です。中東におけるイスラム国家樹立を目指す過激派組織で、さらにシリア内戦の混乱に拍車をかける結果になりました。

 ただ、2015年にロシアが介入、反「イスラム国」では米国、欧州諸国も協調したため、「イスラム国」は2017年10月、北部ラッカを、11月には東部デリゾールをそれぞれアサド政権軍に明け渡しました。

 2018年から2019年にかけても、ロシア軍をバックにしたシリア政権軍や、欧米軍の攻勢で、イスラム国勢力はシリア東部のバグスに追い込まれ、組織はほぼ壊滅しました。

 米国のトランプ大統領は2018年12月、シリア駐留米軍(約2000人)を全面撤退させる方針を表明しましたが、イスラム国復活の恐れを懸念する声も強く、2019年2月、平和維持活動に従事する200人規模の兵力を残留させる方針に転換しました。

シリア政権軍が優位に

 戦況は、アサド政権軍がイスラム国の占領地域を奪還したことで、国土の約6割を支配し、優位に立っています。

シリア内戦では、死者、難民数が増大

 泥沼化するシリア内戦の結果、死者、避難民の数も増大する一方です。

 シリア人権監視団によると、死者はこれまでに、388652人となりました。民間人が117385人で、約3分の1を占めています。行方不明者は16万人に達しています。

 避難民は近隣諸国を中心に約568万人、国内では660万人となっています。シリアの人口が約1850万人ですから、すごい数です。

シリア内戦終結の可能性は?

 では、シリア内戦終結の可能性はあるのでしょうか、アサド政権軍が優位に立っていますが、大国の介入は依然として続き、内戦終結への展望は見えていません。

 避難民のシリアへの帰還もほとんど進んでいません。国土復興も、インフラ整備だけで4000億ドル(約45兆円)が必要であり、見通せない状況です。国連安保理も、ロシアの拒否権行使で、有効な政策を打ち出せず機能しなくなっています。

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